●ラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」といえば、「眠りの森の美女」や「美女と野獣」「親指小僧」といった童話を題材にした名曲としておなじみ。が、この組曲で唯一、第3曲「パゴダの女王レドロネット」はどういう話か、日本ではほとんど知られていないのではないだろうか。なにせ元ネタのドーノワ夫人の「緑の蛇」の日本語訳が入手困難なので、レドロネットとは何者なのか、そしてどういうストーリーなのか、簡単にはわからない。あちこちの解説を読んでも、記述が混乱気味だったりする。そこで! この「緑の蛇」とはどういう話なのかをONTOMOの拙連載、おとぎの国のクラシック第10話でご紹介した。実は「緑の蛇」はそこそこ長い話なのだ。正直なところ、少々冗長で、読んでいて「ああ、このへんは刈り込んでリライトしたいなあ……」という気分になる。新訳が出ないのも納得。
●で、どうやって「緑の蛇」を読んだかといえば、昭和5年刊行の「仏蘭西家庭童話集 第2巻」(ドルノア夫人著/長松英一訳/改造社)を国会図書館デジタルコレクションを利用して読んだ。このサービスは強力。著作権の切れた書籍が大量にデジタル化されており、容易に閲覧できる。ただ、昭和5年刊行とあって、一部、日本語がわかりづらいところがあったので(現代ならそんな訳にはしないよなあ、みたいなところ)、そういう場所はネットで見つけた英訳を参照した(これもDeepLなどの力を借りて)。
●ONTOMOにも書いたけど、予想外だったのは「緑の蛇」の「蛇」とは、実際にはドラゴンを指しているということ。翼を持つと記述されているので、ワタシの感覚ではそれは蛇ではなくドラゴン(竜)だ。蛇は気味が悪いけど、ドラゴンだとカッコよくない? だいぶイメージが違う。英題は The Green Serpent。serpentって蛇だよな、って思うじゃないすか。楽器のセルパンと同じ言葉だし。でも待てよ、英語で蛇と言ったらsnakeじゃない? さて、snakeとserpentはどう違うのか。そんなのは英語力のある人には常識かもしれないが、ワタシは知らなかった。学研のKiminiブログによれば、snakeは一般的な蛇、serpentは大蛇、とくに神話などで出てくるような大蛇を指す。さらに小学館プログレッシブ英和中辞典の記述では、serpentに「ヘビ;竜,(神話上のヘビに似た)爬虫類」と、明確に竜を含めている。そうだったのかー。
●大蛇と言えば、モーツァルトの「魔笛」冒頭場面や、ワーグナー「ニーベルングの指環」にも出てくるけど、もしかしてあいつらもドラゴンなの?
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●明日より連休。ラ・フォル・ジュルネがはじまる。
May 2, 2024