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May 8, 2024

マリオス・パパドプーロス指揮オックスフォード・フィル

マリオス・パパドプーロス指揮オックスフォード・フィル
●7日はすみだトリフォニーホールでマリオス・パパドプーロス指揮オックスフォード・フィル。ソリストには12歳にしてベルリン・フィルへのデビューが決まったHIMARIが登場するとあって、全席完売の人気ぶり。客席の雰囲気もふだんの公演とは少し違った感じ。プログラムは前半がチャイコフスキーの幻想序曲「ロミオとジュリエット」、HIMARIの独奏でビゼー~ワックスマンの「カルメン幻想曲」、クライスラーの「ジプシーの女」「中国の太鼓」、後半がメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。ソリストは評判にたがわない鮮やかな技巧で、ステージ上のふるまいも堂々たるもの。輝かしいキャリアしか予感させない。これから成長期を迎えてぐんぐんと大きくなると思うが、健やかに育ってほしいと願うばかり。ソリスト・アンコールでバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番からアンダンテ。
●オーケストラは初めて聴く楽団。連休中に金沢で開催されていたガルガンチュア音楽祭が招聘したイギリスのオーケストラで、音楽祭を終えた後、東京でも一公演を開催した模様。指揮のパパドプーロスが創設者。ふだん聴くようなオーケストラとはぜんぜん違ったテイストを持っていて、一言でいえば、うまいというよりエモい。味が濃いというか、未知の味というか。かなり雑然として始まってどうなることかと思っていたら、どこかでスイッチが入って、「スコットランド」はものすごく熱い音楽になった。みんな自己主張が強そうで、作品に一歩踏み込んでくる感じがある。世界は広い。
●「スコットランド」の第1楽章、主部に入ったところで、ぐっと弱々しく演奏して、廃墟の音楽みたいになっていたのがおもしろい。あと、パパドプーロスは各楽章を続けずに、しっかり間を取っていた。第2楽章が終わったところで第1ヴァイオリンのほうに顔を向けたら、少し拍手が起きた。楽章間の拍手はぜんぜんよいと思うのだが、アタッカの指示のある「スコットランド」では珍しい。
●「ロメオとジュリエット」にしても「スコットランド」にしても、イギリス由来と言えば言えなくもないけど、かなり強引ではある。が、アンコールではしっかり「お国もの」をやってくれた。エルガーの「ニムロッド」と「威風堂々」第1番。なんと2曲も。「ニムロッド」はすこぶる濃厚。「威風堂々」で曲が終わるのを待ちきれずに客席からドッと拍手がわいた。こういうのはいい。