●21日はサントリーホールでユライ・ヴァルチュハ指揮読響。プログラムはマーラーの交響曲第3番。チケットは完売。メゾ・ソプラノにエリザベス・デション、合唱は国立音楽大学と東京少年少女合唱隊。ヴァルチュハは新たに首席客演指揮者に就任したスロヴァキア出身の指揮者。前回の客演時に聴けなかったので今回、初めて聴くことに。ていねいに彫琢されたマーラーで、端然として見通しがよい。輝かしく、芯があり剛性の高い読響サウンド。第1楽章は落ち着いたテンポでもう少し推進力がほしいとは思ったものの、進むにつれてじわじわとエネルギーを増して、終楽章では深く大きなクライマックスを築いた。第3楽章のポストホルンはオルガン席の下手側の扉を開いて、その奥から聞こえてくる趣向。メゾ・ソプラノはまろやかで温かみのある声。児童合唱は至高の尊さ。
●曲が終わった後は(最後、すごくきれいな響きで終わった)、完璧な静寂。かなり長く余韻を味わった後、客席から爆発的な喝采がわき起こった。なかなかこうはならない。もちろん、ヴァルチュハのソロ・カーテンコールも。
●交響曲第3番、マーラーがシベリウスとの対話で語った「交響曲とは世界のようでなければならない、万物を含んでいなければならない」という有名な言葉をそのまま体現したような巨大な作品だと感じる。同じように自然を題材としていても、リヒャルト・シュトラウス「アルプス交響曲」とは対照的で、自然を表現してはずなのに最後は人間と神の対話みたいなところに行き着く。自然観みたいなことでいえば、自分はシュトラウスの側に立っている人間なんだけど、やっぱりこういう演奏を聴くと畏怖の念がわいてくる。第6楽章は拡張版後期ベートーヴェンって感じる。
May 22, 2024