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June 3, 2024

ステファニー・チルドレス指揮読響のドヴォルザーク他

●31日はサントリーホールでステファニー・チルドレス指揮読響。プログラムはシベリウスの交響詩「フィンランディア」、エルガーのチェロ協奏曲(鳥羽咲音)、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。ゲストコンサートマスターに﨑谷直人。これが日本デビューとなるチルドレスはイギリス出身で、なんと25歳。しかし今や指揮台に若い女性が立っても、これといった違和感がない。世の中、変わる。さらに言えばエルガーでソリストを務めた鳥羽咲音は19歳の新星だ。
●チルドレスは長身痩躯で、遠目には若い男性にも見える。指揮ぶりは明快。とても華のある人だが、音楽作りは正攻法。読響から明るめで見通しのよいサウンドを引き出す。剛ではなく、すっきり。ドヴォルザークでは土の香りは薄く、スマートで推進力がある。陰影に富んだ第2楽章が出色。鳥羽咲音は以前にドヴォルザークのチェロ協奏曲でアグレッシブでスケールの大きな演奏を聴いたが、今回はノーブル。深い愁いを帯びた晩秋の音楽が春色に染まった感。ソリスト・アンコールがびっくりで、オーケストラのチェロ・セクションが加わって、ドヴォルザークの「わたしにかまわないで」チェロ・アンサンブル版。原曲は歌曲だけど、ドヴォルザークがチェロ協奏曲で引用したことで知られている。
●このアンコールがあって、後半が「新世界より」なんだから、いかにも協奏曲がドヴォルザークになりそうなものだが、エルガーだったのだ。別の公演でドヴォルザークを聴いているだけに、遠からず記憶が混濁してこの日がドヴォルザークだったと勘違いしそうな気がする……と、ここに書いておけば、きっと覚えていられるにちがいない。