●5日はサントリーホールのブルーローズで、小菅優プロデュース「月に憑かれたピエロ」。6月1日に開幕したサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンの一公演で、強力メンバーがそろった。メゾ・ソプラノにミヒャエラ・ゼリンガー、ピアノに小菅優、ヴァイオリン&ヴィオラに金川真弓、チェロにクラウディオ・ボルケス、フルート&ピッコロにジョスラン・オブラン、クラリネット&バス・クラリネットに吉田誠。
●目当てはもちろん後半のシェーンベルク「月に憑かれたピエロ」だが、前半もかなり楽しんだ。会場が真っ暗な状態で静かに出演者たちが登場し、どうしたのかなと思ったら、クラリネットが客席の間を歩きながら、ストラヴィンスキーのクラリネット独奏のための3つの小品より第1番を演奏。舞台に上がると、そのまま続けて、ストラヴィンスキーの「シェイクスピアの3つの歌」へ。独唱、フルート、クラリネット、ヴィオラのための作品。「ピエロ」と結びつきを感じる。続くラヴェルの「マダガスカル島民の歌」は、やはり編成が特殊で、独唱、フルート、チェロ、ピアノ。たぶん、録音でしか聴いたことがなかった曲かも。第2曲「アウア!」で島民が白人に向ける向ける怒りと不信が強烈。こんな曲だったのか。前半のおしまいは、ベルクの室内協奏曲第2楽章アダージョのヴァイオリン、クラリネット、ピアノのための編曲版。作曲者自身の編曲で、これもたぶん初めて。「ピエロ」とのつながり以上に、官能性の豊かさを堪能。
●後半、「月に憑かれたピエロ」はゼリンガー(ゼーリンガー)が衣装とメイクをピエロに寄せて登場。表情や身振りも含めて、まさに歌いながら演じるというピエロ感。すっかり手の内に入った作品を楽しんで歌っている様子。アンサンブルは緻密。洗練されており、「ピエロ」の妖しい世界を描きつつも、ほとんどさわやかといっていいほど。小ホールなので字幕はないのだが、各曲の対訳が配られていて、これが大いに役立った。めくりやすく読みやすく組まれていて、照明も暗すぎず、配慮を感じる。ありがたい。
●詩のなかで、ピエロのカサンドロいじめがひどい。ヴィオラを弾いていた弓で、カサンドロの禿げ頭を夢見心地で弾く(第3部 セレナード)。情景を頭に思い浮かべると、かなりおかしい。
●おまけ。AI画伯DreamStudioさん作、Pierrot in the Moonlight。
June 6, 2024