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June 11, 2024

原田慶太楼指揮NHK交響楽団、反田恭平のオール・スクリャービン・プロ

原田慶太楼指揮NHK交響楽団
●8日はNHKホールで原田慶太楼指揮N響。ソリストは反田恭平。オール・スクリャービン・プロ、しかも有名曲は一曲も含まれていないのに、あの巨大なNHKホールが完売(しかも2公演ある)。客席の雰囲気もいつもと少し違う。N響定期ではいつも男性トイレに長い列ができるのだが、珍しく女性側に長蛇の列。今、女性たちの間で熱いスクリャービン・ブームが!(違う)
●曲は「夢想」、ピアノ協奏曲嬰ヘ短調、交響曲第2番ハ短調。どれも若き日の作品で、神秘主義者スクリャービンとしての面妖さには至らず、ロマンティック。最初の「夢想」は5分足らずの簡潔な初期作。ピアノ協奏曲はまだショパンへの憧れが前面に出ているのだが、終楽章の爆発ぶりは圧倒的。反田恭平のピアノは輝かしく、パワフル。巨大空間に埋もれない。強烈なフィナーレの後、ソリスト・アンコールは一転して優しくグリーグの「トロルハウゲンの婚礼の日」。ほのぼの。休憩中に「スクリャービンに感激して涙が出た」と語っているお客さんの声が耳に入ってきた。反田さんはN響とは以前にターネイジのピアノ協奏曲も弾いてくれたし、昨年は兵庫のPACオケとブリテンのピアノ協奏曲を弾いてるし、スターになってもなかなか聴けない曲に取り組んでくれるのがありがたい。そういえば初めて反田さんの演奏を聴いたのは、まだ学生の頃のスクリャービンだった……。
●で、メインがなんとスクリャービンの交響曲第2番なのだが、この曲、めったに聴けなさそうでいて案外聴ける曲でもある。そういう意味では隠れた人気曲なのかも。N響だとパーヴォ・ヤルヴィ指揮でも聴いた記憶。そのときは切れ味の鋭さが印象に残ったけど、今回はねっとりとした情念の表出が聴きもの。前にも書いたかもだけど、この曲、途中で小鳥のさえずりがあって、その後で嵐があって、嵐の後に歓喜が訪れるのがベートーヴェン「田園」風。1901年の作曲だから、マーラーでいえば交響曲第5番の頃。