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June 24, 2024

セバスティアン・ヴァイグレ指揮読響と角野隼斗&フランチェスコ・トリスターノ

●22日は東京芸術劇場でセバスティアン・ヴァイグレ指揮読響。ソリストに角野隼斗とフランチェスコ・トリスターノが登場するとあってチケットは完売。当日券の販売もなかったが、「キャンセル待ち整理券」が配布されたという人気ぶり。客席の雰囲気もいつもとほんの少し違う。
●ソリストは華やかだがプログラム全体は案外と渋い。前半にワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死、ブライス・デスナーの2台のピアノのための協奏曲(日本初演)、後半はウェーバーの「オイリアンテ」序曲とヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」。ブライス・デスナーがキラキラしてるけど、それ以外はウェーバー、ワーグナー、ヒンデミットと連なる剛健なドイツ音楽の系譜で、ヒンデミット作品が本来バレエ音楽として構想されたことを考えれば、オペラ&バレエ音楽の系譜でもある。
●とはいえ、最大の聴きものはやはりブライス・デスナーの協奏曲。現代音楽の作曲家でもあり、ロック・バンド「ザ・ナショナル」のギタリストでもある音楽家、と聞けば角野隼斗とフランチェスコ・トリスターノほどふさわしい奏者もいない(世界初演はラベック姉妹)。3楽章の急緩急のフォーマットで書かれ、反復的なリズムとカラフルなオーケストレーションをベースとした躍動感あふれる音楽で、大きく見ればポストミニマル風なのだが、手あかにまみれた感はなく、フレッシュで輝かしい。端的にいえばカッコいい。ふたりのソロがキレッキレとあれば、なおさら。曲が終わって、ドッと会場がわくかと思いきや、微妙に一瞬間があったのが少しおもしろかった(最初のワーグナーが終わった後にたっぷり沈黙があったことが微妙に影響してた説)。アンコールにリチャード・ロドニー・ベネットの4つの小品組曲から第4曲フィナーレというジャズ風の曲。
●「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲と愛の死は、さすがのヴァイグレで、官能性は控えめで、悠然とした大きな流れを作り出す。ヒンデミット作品はダサカッコよさの極致。たしかに曲名通りウェーバーの主題を題材にしてはいるのだが、もとの主題がどれひとつ有名ではないという……。第1楽章と第4楽章はクセになりそう。聴いていて、あれ、この曲ってバルトークの「管弦楽のための協奏曲」とどっちが先なんだろう、と思った。どちらかが影響を受けているのでは。が、違ったんである。両曲とも1943年の作曲なので、影響を受けようがない。
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●EURO2024は第3節に入った。開催国ドイツ対スイス、両者引分けでも決勝トーナメントに進出できるので、すでに2勝のドイツは選手を入れ替えると思いきや、ターンオーバーなし。若き知将ナーゲルスマンなりの分析があったのだとは思うが意外。あわやという展開ながら、無事に1位通過を決めた。