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June 26, 2024

「ピュウ」(キャサリン・レイシー著/井上里訳/岩波書店)

●昨年刊行されていた本なのだが今ごろ読んだ、「ピュウ」(キャサリン・レイシー著/岩波書店)。アメリカの南部の小さな町の教会で、信徒席に眠るよそ者が発見される。この人物は外見からは男子のようにも女子のようにも見える。そして、白人のようにも黒人のようにも見える。言葉はほとんどしゃべらない。名前がわからないので、住人たちは「ピュウ」(信徒席)と名付け、コミュニティに受け入れようとするのだが……。
●といった展開なのだが、特筆すべきはこの物語が「ピュウ」の一人称で語られていること。よそからやってきた謎めいた人物を本人の視点で書いているのだ。これは秀逸。ピュウはなにも語らない。すると、相手が勝手に自分の物語をしゃべりだす。みんな戸惑いながらも、勝手にピュウのなかに自分の見たいものを見ている。
●この南部の町には年に一度の独特の祭りがあって、それがコミュニティの結束を保っている。すばらしい祭りだという人が多いが、嫌悪する人もいる。わわ、それってシャーリイ・ジャクスンの名作短篇「くじ」じゃないの。もちろん、 「くじ」のようなイヤ~な後味は残さないのではあるが。
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●EURO2024は第3節の中盤。クロアチア対イタリアが劇的だった。クロアチアは決勝トーナメント進出のために勝利が必要。イタリアは引分けでもOK。後半、クロアチアはモドリッチがPKに失敗するが、その直後にモドリッチがゴールを決めて先制。イタリアは反撃に迫力を欠き、このままクロアチアの2位、イタリアの3位が決まるところだったが後半53分、長いアディショナルタイムのラストプレーでイタリアのザッカーニがデル・ピエロばりの美しいゴールを決めて笛。歓喜のイタリアは1位通過。クロアチアは3位。38歳の英雄モドリッチは代表から引退するのだろうか。