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2024年7月アーカイブ

July 31, 2024

マンフレート・ホーネック指揮PMFオーケストラ 東京公演

PMF2024ガイドブック●30日はサントリーホールでPMFオーケストラ東京公演。昨年に続き、今年もPMFガイドブックや(札幌&苫小牧公演の)プログラムノートに寄稿させてもらった。ありがたいことである。指揮はマンフレート・ホーネック、ソリストはティル・フェルナー。プログラムはモーツァルトのピアノ協奏曲第22番とマーラーの交響曲第5番で、がっつり。曲も出演者もウィーン・プロだが、もちろんオーケストラは音楽祭のために結成された多国籍集団。若者たちの初々しさがまぶしい。
●モーツァルトのピアノ協奏曲第22番、もともと祝祭感のある大柄な曲だけど、ホーネックの手にかかるといっそうダイナミックに。ティル・フェルナーのピアノは端正で堅実。ソリスト・アンコールにシューベルトの4つの即興曲D.935の第2番。しみじみして詩情豊か。
●前半が長めだったので、後半のマーラーが始まる時点で20時を過ぎていて、客席がだれないかなと案じたのだがこれはまったくの杞憂。マーラーの交響曲第5番では若者たちのエネルギーが大爆発。アカデミー・オーケストラでしか聴けないタイプの一期一会にかける情熱がひしひしと伝わってくる。個々のプレーヤーの技量も高い。ホーネックは起伏に富み明快な音楽を紡ぎ出す。第1楽章からはほとんどアタッカで第2楽章につないで、その後はたっぷりと間をとって第3楽章へ。大活躍のホルンはいつのまにか立奏。第4楽章アダージェットは丹念。終楽章は輝かしくエネルギッシュ。客席は声を挙げての大喝采。首席トランペットと首席ホルンに盛んなブラボーの声。客席が大盛り上がりのなか、ホーネックはさっと合図を出して、シュトラウス「ばらの騎士」のワルツを元気いっぱいに。若いプレーヤーたちの「やり切ったぜ」という表情が尊い。

July 30, 2024

高崎市美術館と高崎市タワー美術館

高崎駅(ぐんまちゃん駅)
●先日、高崎芸術劇場でペトル・ポペルカ指揮プラハ放送交響楽団を聴いたが、その際に高崎市美術館と高崎市タワー美術館にも立ち寄った。高崎まで行って演奏会ひとつだけ聴いて帰るのは経済効率がよくないと思い、せっかくなので。高崎市美術館は以前にも訪れているが、高崎市タワー美術館は今回が初めて。高崎駅をはさんで、どちらも駅近くの好立地で、ともに市の美術館のようだ。

高崎市美術館 渡辺おさむ お菓子の王国II
●高崎市美術館では「渡辺おさむ お菓子の王国II」が開催中(~9/1)。食品サンプルの技術を用いて、さまざまなものがスイーツでデコレーションされている。全般に「かわいい」トーンで、いかにも「映える」。尖がった要素は希薄ではあるが、ここは建物の少し乾いた感じの雰囲気がよい。落ち着く。

高崎市美術館 渡辺おさむ お菓子の王国II
●一部屋、ずらっと長いテーブルに色とりどりのスイーツが並べられた一画があり、中央にふたつ椅子が置いてある。ここに座って撮影ができるという趣向。どう見てもカップルが座って撮影する想定だと思うが、部屋にただひとりの鑑賞者だったワタシに向かって、親切にも係員さんが「撮影しましょうか」と声をかけてくれたので、椅子に座って撮ってもらった。その写真をここに載せようかなと一瞬だけ思ったんだけど、やっぱりみっともないので止める。写真を見て思ったのは、超絶ファンシー空間のど真ん中にひとりオッサンが座ったことで、作品が強烈な批評性を獲得したということだった。

高崎市タワー美術館 佐藤晃一 五季
●高崎市タワー美術館では、佐藤晃一のポスターと日本美術を組合わせて展示した「日本美術×グラフィックデザイン」(~9/16)が開催中。こちらはビルの2フロアのみを使ったコンパクトな展示だが、少しレトロモダンな雰囲気の佐藤晃一作品に、伝統的な日本画や浮世絵を組合わせているところに妙味がある。上掲の写真は佐藤晃一の「五季」から。
●高崎芸術劇場、高崎市美術館、高崎市タワー美術館、すべて駅から近く、歩いて回れるのが吉。

July 29, 2024

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2024 東京交響楽団 オープニングコンサート

summermuza2024opening.jpg
●27日はフェスタサマーミューザKAWASAKI 2024の東京交響楽団 オープニングコンサートへ。チケットは完売。音楽監督ジョナサン・ノットが登場し、昨年に続いてチャイコフスキーの交響曲を2曲。交響曲第2番「ウクライナ」(初稿版)と交響曲第6番「悲愴」。チャイコフスキー自体、ノットのレパートリーとしてはかなり珍しいが、おまけに交響曲第2番がめったに演奏されない初稿だった。この初稿と一般的な改訂稿、比べてみると、初稿のほうがずっとおもしろい。改訂稿はすっきりとしているが、もともと粗削りに魅力のある曲から粗い部分をそぎ落とした結果、肝心の味が薄くなっているというか。今後、初稿が標準的に選択されるようになってもおかしくないと思う……が、それ以前にこの曲自体がほとんど演奏されていないわけだが。
●ノットが昨年やろうとしていたのは、慣習にとらわれないチャイコフスキーの再発見で、基本ラインは「金管楽器の咆哮で血をたぎらせない抒情的なチャイコフスキー」だったと思う。楽器間のバランスやダイナミクス、テンポ操作などを一から見直して作るといった方向性。で、前半の「ウクライナ」は、昨年に比べると少し穏当というか、ノーマル寄りのチャイコフスキー。その分、チャイコフスキーを聴く興奮を味わえたともいえる。その点、後半の「悲愴」のほうがノットの狙いは生かされていたのでは。大袈裟なジェスチャーを控えたところで見えてくる詩情や推進性があって、ほとんどノーブル。第3楽章のおしまいは晴れやか。ここで拍手が来るかも!と思ったけど、一瞬出そうで出なかった。惜しい。心のなかで拍手。
●「悲愴」のヒーローはファゴットだと思う。曲の冒頭でファゴットが主役になるのは「悲愴」と「春の祭典」。で、「悲愴」の場合は第1楽章のppppppの最弱音のところで、下行するクラリネットをファゴットが受け継ぐ。スコア上はそうなっているにもかかわらず、これをバスクラリネットで代わりに演奏する慣習がある。ノットはスコア通りにファゴットに吹かせた。冒頭のソロがフリで、ここがウケだと思うので、やっぱりファゴットが演奏するのが本来のあり方なのだろう。結果として、ここでファゴットに事故が起きて、逆説的に慣習の正当性を証明してしまったわけだけど、それでもそういうリスキーな場所なんだと受け入れたい。演奏が終わった後、ノットはまっさきにファゴットを立たせた。
●長く続いたノットと東京交響楽団の黄金コンビだけど、26年3月に音楽監督を退任することが発表されている。「悲愴」終楽章は惜別の辞のように感じる。この終楽章も、おしまいのところは前へ前へと進む音楽って気がする。ノットのソロカーテンコールあり。

July 26, 2024

パリ・オリンピック 男子サッカー ニッポンU23対パラグアイU23

ニッポン!●あんまり関心ないなー、オリンピックのサッカーは……とボヤキながらも、結果が大勝だっので、NHKプラスの見逃し配信で試合の様子を見てみた、男子サッカーのニッポンU23対パラグアイU23。オンデマンド配信があるからと思って、テレビ中継の録画はしていなかったのだが、配信で観戦できるのはありがたいことである……。
●が、画質がよろしくない。先日のWOWOWのEURO2024もそうだったけど、テレビのほうが画質がいい。これに比べると、DAZNの画質はやっぱりいいんだなと思う(ベルリン・フィルのDCHもよい)。どうしてそうなるのか。
●で、試合は5対0でニッポンU23が圧勝したのである。パラグアイU23は南米1位。実は前半にパラグアイに退場者が出たため大差が付いたのだが、退場者が出る前の試合展開だけを見てもニッポンが相手を上回っていたのはまちがいない。キーパーとディフェンスラインからのビルドアップが非常に巧みで、美しいボール回しに見惚れてしまうほど。とくに中距離のグラウンダーのパスにスピードがあって正確。キーパーの小久保玲央ブライアンの冷静さが頼もしい。中盤の底でチームの中心となっているのが藤田譲瑠チマ(元マリノス、現在はベルギーのシントトロイデン)。視野が広く、足元がうまい。一方のパラグアイはハードタックルが身上のようなのだが、序盤から冷や冷やするほど激しいプレイが多く、前半25分にワイルダー・ビエラが平河悠への危険なチャージで一発レッド。ボールを離した後の平河に対して、軸足の足首を踏んでおり、かなりひねったようだが大きなケガでないことを願う。平河はしばらくプレイを続行したが、やはり無理なようで交代に。とにかくパラグアイのプレイは荒かった。
●ニッポンの先制点はパラグアイに退場者が出る前で、斉藤光毅のスルーパスを大畑歩夢がマイナス方向に折り返して、これを受けた三戸舜介が正確なシュートを決めた。相手に退場者が出た後はむしろ試合が停滞して、後半の序盤にはパラグアイが攻勢に出る場面もあったが、相手の動きが落ちてくると後半18分からゴールショーに。三戸舜介、山本理仁、藤尾翔太、藤尾翔太と次々と得点して5対0。藤尾は途中交代で大活躍。どれも技術を感じさせるゴールだったが、三戸の2点目をアシストした斉藤の華麗な個人技が最大の見せ場。
●ゴールシーンのハイライト映像をここに貼りたいなと思ったが、オリンピックの動画はあれこれ制限があって、そう簡単に貼れないのだ。検索するとスパム動画や違法動画がやたらとひっかかり、今どきそれでいいのかIOCと思わなくもない。NHKプラスの試合動画はこちら(8/1 午前4:15まで)

July 25, 2024

ダン・エッティンガー指揮東京フィルのブルックナー

●24日は東京オペラシティでダン・エッティンガー指揮東フィル。プログラムはモーツァルトのピアノ協奏曲第20番(阪田知樹)、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。生誕200年でなくともブルックナーは毎年大人気だが、エッティンガーがブルックナーを振るのはやや意外。エッティンガーはかつての常任指揮者、現在の桂冠指揮者。定期演奏会には10年ぶりの登場だとか。
●モーツァルトの協奏曲からエッティンガーはオーケストラを丹念に彫琢して、明快な響きとしっかりとしたダイナミクスによるスケールの大きな表現。格調高い阪田知樹のソロとともに、一歩一歩踏みしめるように進むモーツァルト。短調作品ということもあるが、重量感あり。ソリスト・アンコールにマルチェッロのオーボエ協奏曲にもとづくバッハのアダージョBWV974。切々として情感豊か。
●前半がたっぷりめだったので、休憩が終わって後半のブルックナーに入る時点で20時を過ぎていた。エッティンガーのブルックナーは、近年聴いたこの作曲家の交響曲のなかではもっとも輝かしい演奏。新たにブルックナーに取り組む指揮者には多かれ少なかれブルックナー像を再構築しようとする傾向があると思うが、伝統に束縛されない作曲家像を築くという点でエッティンガーは成功を収めていたのでは。もともと東フィルは暗く重厚というよりは明るく華やかなサウンドに持ち味があると思うが、さらにエッティンガーは曖昧なところのないくっきりとした輪郭をもった響きを引き出す。表からも裏からも光を当てたかのような燦然たるブルックナー。宗教的な恍惚感でもドイツの深い森でもない、都市の祝祭とでもいうべき鮮烈なスペクタクルがくりひろげられた。
●曲が終わった後、客席に完全な沈黙。終演が遅めになったので、カーテンコールの途中で早々に帰る人が多かったのはしかたがない。
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●パリ・オリンピックの男子サッカーが始まった。本日の午前2時から初戦のニッポンU23vsパラグアイがあったのだが、試合を見ないまま結果を知ってしまった。男子サッカーにとって、オリンピックはU23のようなU23でもないような、世界大会のような世界大会ともいえないような不思議な大会だ。欧州からの参加国は開催国フランス以外にウクライナ、スペイン、イスラエルのみ。もともとヨーロッパは3枠しかないのだ。アジアとアフリカがそれぞれ3.5枠。南米は2枠だがブラジルはいない。日本がメダルを狙えるのはたしか。

July 24, 2024

ガルシア=マルケス「百年の孤独」再読 その4 年金を待つ人

●(承前)えっ、またその本の話? そう、またその本の話だ。ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮文庫)だ。再読には初読とは違った味わい方がある。マコンドという蜃気楼のような町で生きるブエンディア一族のなかで、唯一、国家の行方を左右するような並外れた軍事的才能を発揮したのが、アウレリャノ・ブエンディア大佐。だが、大佐は老年期に入るとすべてに幻滅し、世捨て人のようになって、ただひたすら仕事場で魚の金細工を作り続ける。

大佐が戦争と関係のある問題に最後にかかわったのは、約束ばかりでいっこうに実現しない終身年金を承認させるため、両派の旧兵士らがそろって大佐の援助を求めてきたときである。「その件は、あきらめたらどうかな」と大佐は答えた。「みんなも知っているように、わしが年金を断ったのも、じりじりしながら死ぬまで待たされるのがいやだったからだ」

●この一節で思い出すのが、ガルシア=マルケスの初期の代表作である短篇「大佐に手紙は来ない」。以前、「ガルシア=マルケス中短篇傑作選」で紹介したが、これは年金開始の手紙を待っている、ある退役した大佐の物語なのだ。かつて名を馳せた闘士が世間から忘れ去られ、もう食べ物に困るほど困窮し、ただ毎週金曜日になると郵便局に足を運び、年金開始の手紙が届いていないかを確かめる。手紙など来るはずがないのに。かつてガルシア=マルケスは、「大佐に手紙は来ない」を読んでもらうために「百年の孤独」を書かなければならなかったと言ったとか。報われないとわかりながら「いつまでも待ち続ける」というのは、ガルシア=マルケスの小説にしばしば登場するテーマだ。
●「百年の孤独」、初読では読み終えて頭が真っ白になるような衝撃があったが、再読してみると前半はわりと覚えているのに、終盤になるとぜんぜん覚えていないことに気づく。特にフェルナンダと、その子供たちの代は印象が薄い。なぜなのか。(つづく
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●宣伝を。ONTOMOの連載「おとぎの国のクラシック」第12話「眠れる森の美女」が公開中。12回シリーズなので、これが最終回。ご笑覧ください。

July 23, 2024

Windows 11 の「ファイルシステムのエラーです -1073741792」

●ふだんは機嫌よくビュンビュンと動いていても、あるとき突然、思い通りにならなくなるのがパソコンだ。先日、Windows 11が(おそらくはWindows Updateを機に)、挙動がおかしくなった。現象としては、権利者権限が求められるツールやコマンドを受け付けてもらえなくなった。つまり、ふつうのアプリは動作する。だが、たとえばタスクマネージャーを起動しようとすると、

「ファイルシステムのエラーです -1073741792」

というエラーメッセージが表示される。システム関係のツールには軒並みこのエラーが出る。コマンドラインやパワーシェルは管理者権限なしなら起動するが、管理者権限ありだとやはり同様のエラーが出る。どうやら管理者権限が必要な機能はすべてエラーになるっぽい。これが事態を複雑にした。
●うーん、この状態でもひとまず仕事はできるから、このまま使い続けちゃおうかな~と一瞬思ったが、それで無事に済むはずがない。復元ポイントを使ってWindows Update前に戻そうと思っても、失敗してしまう。そこで、あれこれ検索して、システムファイルチェッカーを使うことに。システムファイルの整合性をチェックし、破損があった場合に修復してくれる。コマンドライン(cmd)から

sfc /scannow

を実行すればよい。しかし、そのコマンドラインを起動できないのだ。そこで、「設定 > システム > 回復 > PCの起動をカスタマイズする」を使って再起動する。回復環境からコマンドラインを起動すればよいと考えた。

windows 11 回復環境

ブルーの画面の回復環境が起動したら、そこから「トラブルシューティング > 詳細オプション > コマンドプロンプト」を選ぶと、コマンドラインが使えた。ここで sfc /scannow を使えばいいのだが、回復環境から起動すると起動ドライブ名はX:になるので、Windowsの存在するドライブ名を明示的に指定する必要がある。コマンドラインから dirコマンド等でWindowsのドライブ名を確認したところ、ウチの環境では D:だったので、こうする。

sfc /scannow /offbootdir=D:¥ /offwindir=D:¥windows

すると、

Windows リソース保護により、破損したファイルが見つかりましたが、それらの一部は修復できませんでした。

と言われてしまった。む、ダメであったか。実際、Windowsを起動すると直っていない。
●で、ここから思いっきり迷走して、よくわからないままに修復系のdismコマンドを試したり、chkdskを試したりするが直らない。回復ドライブからの復旧も失敗してしまう。Windows 11の再インストールまで考えたのだが、なにしろ管理者権限を必要とする機能が効かないので、OS上からはできないわけで、なかなか難儀なこと。もしかしてとUEFIのセキュリティ周りの設定を疑ったり、同じエラーメッセージが出て困っている人を海外サイトまで広げて検索したりしたのだが、解決への道筋が見えず、もう本当にクリーンインストールしかないのかもと困り果てたところで、ダメ元でもう一度、sfcコマンドを試してみた。とくに意味もなく、今回はWindowsをセーフモードで起動してみようと思い、回復環境から「トラブルシューティング > 詳細オプション > スタートアップ設定 > 再起動」から「セーフモードとコマンドプロンプトを有効にする」を選んで起動して、そこから

sfc /scannow

を実行した。このやり方ならドライブ名の指定は不要になるので、最初からこの方法でもよかったかも。しばらく待つと、

Windows リソース保護により、破損したファイルが見つかりましたが、それらは正常に修復されました。

と出た! お、さっきは修復できなかったのに、今回はできたのか。
●恐る恐る再起動すると、なんと、直っていた! タスクマネージャーを起動すると、最初だけUACが出て、ふつうに起動した。コマンドラインもデバイスマネージャーもディスクの管理も立ち上がる。どうやら本当に直ったようだ。sfcをセーフモードから実行したのがよかったのか、それとも2回やったことがよかったのか、あるいはdismをしてからでsfcをやったのがよかったのが、なにが効いたのか判然としないのだが、同じエラーで困っている人がいるかもしれないので、ここに顛末を記録しておく。以下、sfcおよびdismコマンドについて、参考にしたURLを貼り付けておこう。

https://support.hp.com/jp-ja/document/c03438733
https://jp.minitool.com/backup-tips/repair-windows-11-10-using-command-prompt.html
https://faq.tsukumo.co.jp/index.php?solution_id=1393

July 22, 2024

エリアス・グランディ指揮読響のブラームス他

●19日はサントリーホールでエリアス・グランディ指揮読響。ウェーバーの「魔弾の射手」序曲、ショパンのピアノ協奏曲第1番(マリー=アンジュ・グッチ)、ブラームスの交響曲第4番という本格名曲プログラム。エリアス・グランディは今年、札幌のPMFに客演しており、札響の次期首席指揮者でもある。今回、初めて聴くことに。ミュンヘン生まれで両親はドイツ人と日本人。実年齢より若く見える。全身を使ったダイナミックな指揮ぶり。ウェーバーもブラームスもドイツ音楽にふさわしい重量感。大まかな造形はオーソドックスで、ときおり強弱の表現に工夫がある。キレキレでも鮮烈でもないのだが、安心して身をゆだねることができるブラームス。
●マリー=アンジュ・グッチのショパンは弱音表現が特徴的。洗練された華麗さという方向性とは少し違って、常套的ではなく、一から吟味して作り上げた詩的表現といった印象。ソリスト・アンコールにラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲のおしまいの部分をピアノのみで。グッチはラ・フォル・ジュルネでも同じ曲をアンコールで弾いていたような。こうなると全曲を聴きたくなる。
●ブラームスの交響曲第4番の第1楽章が終わる直前に、ティンパニのほうからバチン!と妙な音が聞こえた。どうやらティンパニが破れたみたいで、楽章間に破れた1台を横に動かして、残りの3台を使用。
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●宣伝を。大阪の住友生命いずみホールの情報誌 Jupiter の拙連載「あなたは何番がお好き? 作曲家別交響曲ランキング」の第2回はブラームス。紙版に加えて、オンライン版でも公開されている。主要作曲家たちの交響曲について、レコーディングと演奏会の両面で人気ランキングを比較するという連載。ご笑覧ください。

July 19, 2024

ガルシア=マルケス「百年の孤独」再読 その3 くりかえされる名前

●(承前)しつこく、ガルシア=マルケスの「百年の孤独」(新潮文庫)について。ゆっくりと再読を進めていたが、さすがにもう読み終えた。よく言われることだが、この小説は同じような名前の登場人物がなんども出てきて混乱しやすい。一族で名前を引き継いでいくので、どうしてもそうなる。そこで役に立つのが「百年の孤独」読み解き支援キット(池澤夏樹監修)。ウェブページで見てもいいが、PDF版がダウンロードできるので、そちらのほうが高密度で便利かもしれない。家系図とともに、だれがどうしたという一族の歴史が順を追って記されている。これは最後まで読んでしまうと結末を知ってしまうので、読んだところまでを確認用に目を通すのが吉。自分は再読なのに、わざわざ先を読まないように気を付けた。
●マコンドの町を作り出したブエンディア一族の祖は、ホセ・アルカディオ・ブエンディア。その息子にはホセ・アルカディオとアウレリャノ(大佐)がいる。一族の男子はおおむねホセ・アルカディオかアウレリャノの名前を受け継いでいる。半分近くまで来たところで、一族の祖ホセ・アルカディオの妻ウルスラはこう考える。

長い一家の歴史で似たような名前が執拗にくりかえされてきたという事実から、彼女はこれだけは確実だと思われる結論を得ていたのだ。アウレリャノを名のる者は内向的だが頭がいい。一方、ホセ・アルカディオを名のる者は衝動的で度胸はいいが、悲劇の影がつきまとう。どちらとも言えないのは、ホセ・アルカディオ・セグンドとアウレリャノ・セグンドのふたりの場合に限られていた。

このふたりは双子の兄弟で、子どもの頃はそっくりで見分けがつかなかった。ときどき、お互いが入れ替わって周囲の人間をだましたりした。しかし時が経ち、成長するとそれぞれはまったく違った男になった。アウレリャノ・セグンドが祖父ホセ・アルカディオに似た巨漢になり、ホセ・アルカディオ・セグンドはアウレリャノ(大佐)にそっくりのやせすぎな男に成長した。この名前と風貌の交錯を見て、ウルスラは双子が子どもの頃に入れ替わっているうちに、どこかでまちがいを犯して、入れ替わったまま大人になったのではないかと疑う。
●双子の兄弟はまったく別の人生を歩んだ後、同じ日の同じ時刻に世を去る。遺体は瓜二つで、棺桶を埋める際にどちらがどちらかわからなくなってしまい、まちがった穴に埋められることになる。ウルスラが疑ったように、ふたりは子ども時代のどこかで入れ替わっていたにちがいない。
●それで思い出したのだが、ワタシの知人の双子の兄弟も、子どもの頃に入れ替わって大人をだまして遊んでいたと言っていた。これは双子にとって定番の遊びなのだろう。実際に、入れ替わったまま大人になってしまった双子がいるのかもしれない……。(つづく

July 18, 2024

マリノス、ハリー・キューウェル監督の契約を解除

9はキューウェルの9
●ヨーロッパがEURO2024で盛り上がっている間も、Jリーグは続いていた。マリノスは7月6日のアウェイ、ガンバ大阪戦で大敗して、16年ぶり(!)のリーグ戦4連敗を喫してしまった。さすがにこれはハリー・キューウェル監督の解任論が出てくるだろうとは思ったが、7月14日に鹿島相手に予想外の勝利を収めた。なんだか微妙なことになったわけだが、翌日、キューウェル監督の契約解除が発表された。暫定的にジョン・ハッチンソン ヘッドコーチがチームの指揮を執ることに。
●選手としてはスーパースターだが、監督としてはこれといった実績のなかったハリー・キューウェル。これまでのポステコグルー、ケヴィン・マスカット路線を引き継ぐといっても、オーストラリア人という共通項はあったものの、シーズン途中からどんどんスタイルがぶれてしまい、最近ではポステコグルーが築いた超攻撃的スタイルは影をひそめてしまっていた。むしろ耐えるサッカー。ワンボランチへの変更も謎。いや、スタイルが変わるのは悪くないんすよ。異なるプラン、異なるビジョンを掲げてチャレンジするのであれば。ポステコグルーだって、最初のシーズンはずいぶん負けた。でもキューウェルからは新しいビジョンが感じられなかった。尋常ではない過密日程だったので、監督がだれであれ苦戦必至のシーズンだったけど、キューウェルは今のマリノスにフィットする監督ではなかったんだと思う。
●で、ジョン・ハッチンソンは暫定監督だろうから、きっと今マリノスは次期監督を探しているはず。それは名波浩ではないかという説を見かけた(えー)。なぜなら、9ウェルから8ンソンと来たから、次はナナミ。いやー、名波浩はまったくマリノス向きじゃないと思うがなー。で、名波がすぐに去ることになるとしたら、次の次はだれか。はっ、元マリノスの六反勇治では? いやいや、六反勇治はまだ現役選手なのであった(FC琉球のゴールキーパー)。そうだ、呂比須ワグナーがいた! 9ウェル、8ンソン、7ミ、6比須。でも呂比須って新潟の監督時代の印象がよろしくない。うーん、だれなんだ、名波の次は。ていうか、次は名波じゃないし。

July 17, 2024

EURO2024 決勝 スペイン対イングランド

スペイン●ベルリンで開催されたEURO2024の決勝はスペイン対イングランド。ここまで全勝、圧倒的な完成度を見せてきたルイス・デラフエンテ監督のスペインと、3勝3分ながら勝負強さで勝ち上がってきたギャレス・サウスゲート監督のイングランド。好チーム同士の対戦と感じるのは、どちらも自分たちでボールを保持し、主導権を握ることを好むタイプのチームだからなのだろう。その点では前回大会のイタリア対イングランドも同様だった。
●試合が始まってみると、ボールを保持したのは圧倒的にスペイン。これは予想通りで、技術の高さではスペインの優位は疑いようがない。前半はお互いにミスの少ないタイトな展開で、ほぼ決定機なし。後半になると攻め合いに。後半2分、スペインは右サイドのラミン・ヤマル(17歳になった)から左サイドのニコ・ウィリアムズ(22歳になった)にボールが渡って先制。若者ホットラインでゴールを決めた。この後、スペインがティキタカでボールを回して逃げ切るかと思いきや、後半28分、イングランドはパーマーがここしかないという場所にミドルを蹴り込んで同点。後半41分、スペインは左サイドバックのククレジャがワンタッチで入れたグラウンダーのクロスに途中出場のオヤルサバルが右足で合わせて2点目。一瞬、オフサイドかと思ったが、VARでもオンサイド。あとはスペインが静かに試合を終わらせて、スペイン 2対1 イングランド。笛が鳴って喜びを爆発させるスペイン。対するイングランドは2大会連続の準優勝となり、エースのハリー・ケインの無冠が続くことに。なにしろバイエルン・ミュンヘンに移籍しても無冠だったのだから、「ケインの呪い」と呼ぶ人が出てくるのも不思議ではない。
●今大会は番狂わせが少なかった。最後もクオリティの高いチームが勝った。スペインは一時期、洗練されたパス回しであるティキタカを突きつめた結果、ゴールが遠い守備的なボール保持に陥ってしまったが、今のスペインはティキタカに両翼のニコ・ウィリアムズとラミン・ヤマルの突破力が融合して、見ていておもしろいチームになった。大会MVPは決勝戦で負傷のため前半で退いたロドリ。
●前回は優勝のセレモニーで、イタリアのボヌッチが「もっとパスタを食え!」と叫んでスタンド煽る場面があった。今大会、それに相当するほのぼのエピソードは、ヤマルが大会中にオンライン授業を受け、学校の宿題を済ませたということか。

July 16, 2024

アレクサンダー・ガジェヴ ピアノリサイタル

アレクサンダー・ガジェヴ ピアノリサイタル●12日は東京オペラシティでアレクサンダー・ガジェヴのピアノリサイタル。客席は盛況、若い女性が多め。開演時にガジェヴのメッセージが流れ、2年前の同じ会場でのリサイタルと同様、照明を落として真っ暗にして2分間の沈黙を経てから演奏が始まった。「世界観」をまず聴衆と共有しようというのがガジェヴの流儀。
●プログラムもおもしろい。コリリアーノの「オスティナートによる幻想曲」、ベートーヴェン(リスト編)交響曲第7番より第2楽章アレグレット、リストの「詩的で宗教的な調べ」より「葬送曲」、スクリャービンの練習曲より7曲、休憩をはさんでスクリャービンのピアノ・ソナタ第9番「黒ミサ」、ショパンの24の前奏曲より6曲、ベートーヴェン「エロイカの主題による変奏曲とフーガ」。全体でひとつの作品になっているかのようなプログラムで、冒頭のコリリアーノ作品はベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章が題材になっている。反復的な曲想からベートーヴェンがうっすらと浮かび上がり、最後には堂々と引用される。これにリスト編曲のベートーヴェンが続いて、影と実体のような関係を描き、さらにリストの「葬送曲」で哀悼のムードを明確に打ち出して、大きな流れを作り出す。続くスクリャービンの練習曲集では最後に情熱的な嬰ニ短調op8-12。
●ここまでの悲劇的なムードに比べると、後半のショパンはほっと一息つくところ。スクリャービンの「黒ミサ」とおしまいのベートーヴェン「エロイカの主題による変奏曲とフーガ」が描くコントラストが白眉。一瞬にして空気が変わり、ベートーヴェンの眩いばかりの古典性が場を支配する。なんという力強さ、明快さ。この日のプログラムでもっとも古い作品が、もっとも輝かしく、色褪せることのない鮮やかさを誇っていた。
●アンコールはショパンを4曲。3曲目の「英雄ポロネーズ」で客席を沸かせ、もうこれで終わりかなと思ったらマズルカop68-2でしんみりと幕。スタンディングオベーション多数。
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●EURO2024決勝はスペインが納得の優勝。その話題はまた明日に。

July 12, 2024

ガルシア=マルケス「百年の孤独」再読 その2 近親婚

●引き続き、ガルシア=マルケスの「百年の孤独」(新潮文庫)をゆっくりと再読している。その1で紹介したように、一族の祖ホセ・アルカディオ・ブエンディアは、生まれて初めて氷なる未知の物体に触り、「こいつは、近来にない大発明だ!」と感嘆する。このとき、彼は追加の料金を払って息子にも氷を触らせている。氷に触った息子は「煮えくり返ってるよ、これ!」と叫ぶ。この場面を序盤のハイライトと呼びたいのは、有名な冒頭の書き出しと呼応しているから。「百年の孤独」のはじまりの一文はこうだ。

 「長い年月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、恐らくアウレリャノ・ブエンディア大佐は、父親のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思いだしたにちがいない」

 このアウレリャノ・ブエンディア大佐が、上述のホセ・アルカディオ・ブエンディアの息子。この一文のように将来の最期の場面(少なくともそう読める場面)の記述とともに登場人物があらわれるパターンは、これ以降にも出てくる。循環的な時の流れは本書の中心的なテーマだ。だから、何世代にもわたって一族に同じ名前がくりかえし出てくる。
●ホセ・アルカディオ・ブエンディアはマコンドの町の創設者だが、どうしてこの町が誕生したかといえば、もとをたどればホセ・アルカディオ・ブエンディアとウルスラの結婚にたどり着く。ふたりはいとこ同士だった。結婚しようとすると親戚たちはこぞって反対した。近親婚により「イグアナが生まれる」ことを懸念したのだ。実際に一族には先例があり、豚のしっぽを持って生まれてきた男がいた。しかし、ホセ・アルカディオ・ブエンディアは「口さえきければ、豚に似ていようがいまいが、かまうもんか」と言って、ウルスラと結婚する。不吉を恐れたウルスラの母親は、貞操帯のようなものを娘に付けさせる。これが原因となって、ある男がホセ・アルカディオ・ブエンディアをからかう。侮辱されたホセ・アルカディオ・ブエンディアは、槍の一突きで男を殺す。すると、男は死後も悲しげな顔で化けて出て、ふたりにまとわりついた。ついにホセ・アルカディオ・ブエンディアはウルスラとともに村を出ていく決心をする。ふたりは冒険心にあふれた友らといっしょに何年も旅をして、たまたまたどり着いた土地にマコンドの町を建設したのだ。
●一族とマコンドの物語はこんなふうに近親婚ではじまっている。文庫本の最初に載っている家系図の一番下に「アウレリャノ(豚のしっぽ)」と記されており、最後まで読まずとも、いずれ巡り巡って近親婚から「豚のしっぽ」が生まれてくることが予想できる。それだけではなく、中盤ではアウレリャノ・ホセ(ホセ・アルカディオ・ブエンディアの孫)とアマランタが結婚しそうになるのだが、ふたりは甥と叔母の関係にある。アマランタはアウレリャノ・ホセに向かって、自分は叔母であり、ほとんど育ての母のようなものであり、「豚のしっぽのある子供が生まれるかもしれない」と説得する。アウレリャノ・ホセは「かまうもんか、アルマジロが生まれたって」と答える。これは初代のホセ・アルカディオ・ブエンディアの口ぶりにそっくりだ。
●音楽界でいとこ婚でまっさきに思い出されるのはラフマニノフとナターリヤ・サーチナ。ロシア正教会がいとこ婚を禁じていたため、この結婚は困難なものだったそうで、特別な許可を得て結婚にたどり着いたという。ほかにはストラヴィンスキーと最初の妻エカテリーナ・ノセンコもいとこ婚で、これも本来なら許されざる婚姻だったようだ。もっとも日本をはじめ、いとこ婚が許容されている国はまったく珍しくない、というか多数派だろう。ブエンディア一族のいとこ婚に対する忌避感はずいぶんと強い。(つづく

July 11, 2024

EURO2024準決勝 オランダ対イングランド

●以下、本日早朝の試合の結果に触れるので、これから観戦予定の方はご注意を。
●EURO2024準決勝の第2試合はオランダ対イングランド。今大会、ベスト4の段階でダークホースがいなくなり、残るは強豪国のみ。準々決勝では消極的な試合が多くてやたらと延長が多かったが、準決勝になるとなぜかオープンな試合が続く。前日のスペイン対フランス同様、この試合も早々に試合が動いた。前半7分にオランダのシャビ・シモンズがスーパーミドルで先制。この大会、序盤からとんでもないミドルシュートがよく決まる。理由は謎。しかし前半18分、イングランドのハリー・ケインがペナルティエリア内でボレーシュートを打った際に、ダンフリースの足が接触。シュートは外れたのだが、VARの結果、これにPKの判定。ケインが自らPKを決めて同点。オランダのクーマン監督は激おこ。以前ならPKにはならなかったと思うが、ビデオ判定で足が当たっていることが見えてしまうだけに、厳しく取らざるをえないということか。客観性を求めてVARを導入した結果、主観の問題がよりクローズアップされている。
●後半、お互いに惜しいチャンスがいくつかあったが、イングランドのキーパー、ピックフォードのファインセーブなどもあり、なかなか点が入らない。オフサイドになったサカの幻のゴールは、フォーデンのスルーパスに始まるきれいな形だった(でも明白にオフサイド)。これは延長に入るなと思った後半46分、イングランドは途中出場のワトキンスがディフェンスを背負いながらペナルティエリア内でボールを受け、振り向きざまに強烈なシュート。ディフェンスの股を抜けて、ここしかないというファーポストの隅にボールが突き刺さった。イングランドが逆転勝利。
●見ごたえのある試合でどちらが勝ってもおかしくなかったが、これで決勝はスペイン対イングランドという対戦になった。なんというか、好感度の高いチームが残った。イングランドは2大会連続の決勝進出だが、優勝経験はない。決勝に出たのも前回が初めて。ワールドカップでは自国開催で一度優勝しているが、それ以外に決勝進出はない。プレミアリーグという世界最高のリーグを有する割には代表チームの戦績はもうひとつという感があるが、これを機にイメージが変わるかも。完成度が高いのはスペイン、試合ごとに成長しているのがイングランド。決勝まで中四日がスペイン、中三日がイングランド。

July 10, 2024

高崎芸術劇場でペトル・ポペルカ指揮プラハ放送交響楽団

高崎芸術劇場
●9日は高崎芸術劇場へ。プラハ放送交響楽団が首席指揮者兼芸術監督のペトル・ポペルカとともに来日。プログラムはスメタナの連作交響詩「わが祖国」全曲。来日ツアーにはもちろん東京公演も含まれているのだが、「わが祖国」全曲を演奏するのは高崎公演だけということもあって、プチ遠征することに。高崎芸術劇場は開館前に取材で一通り中を見せてもらったことがあるが、外観も内装もすごく立派な作りで、まさしく快適空間。駅から高架歩道(ペデストリアンデッキ、って言うの?)で徒歩5分というアクセスのよさも魅力。車道と分離されていると、こんなにも近く感じられるのかと納得。
●演奏は期待を上回る好演で、雄弁で物語性豊か。覇気がみなぎっている。いわゆる「お国もの」だけど、老舗の味をそのまま差し出すのではなく、ポペルカがしっかりと意匠を施し、熱を吹き込む。「シャールカ」など女たちによる男ども大虐殺の情景が目に浮かぶような鮮烈さ。「ターボル」「ブラニーク」は十分に力強いが、金管がパワー一辺倒にならず、オーケストラ全体と調和した響きを生み出していたのが印象的。意欲満々の管楽器のソロも冴えている。休憩なしの演奏だったが、全曲がとても短く感じた。アンコールなし。大作の余韻を持ち帰ることができた。
●高崎、往路は湘南新宿ラインの特別快速を使ってみた。まあまあ速い。復路はもう特別快速がない時間帯で、在来線ではあまりに遅いので素直に新幹線を使うことに。終演してから駅に向かう途中で、スマホのえきねっとアプリを使って新幹線eチケットを予約し、アカウントに紐づけたSUICAでそのまま乗車。便利になった。が、なにもかもスマホに依存しているところに脆さも感じる。
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スペイン●EURO2024は準決勝の第1試合、スペイン対フランス。攻撃力を武器にここまで全勝のスペインと、守備の強さで2勝3分(PK戦は引分け扱い)で勝ち進んできたフランス。スペインは計11ゴール、フランスはたった3ゴールで準決勝にたどり着いた。となれば、第三者としてはスペインを応援したくなる。開始早々にコロ・ムアニが頭で決めてフランスが先制したが、すぐにスペインがラミン・ヤマル、ダニ・オルモのゴールで逆転。16歳のラミン・ヤマルは史上最年少ゴールを大幅に更新。完全に個人技によるゴールで、伝説になる。スペインが順当に勝ち抜けた。
●試合の間、ずっとスペインの左サイドバック、ククレジャがボールを持つたびにブーイングされていたのが気の毒だった。最初、意味がわからなかったが、ドイツ戦でハンドを見逃されたからという理由で、ドイツ・サポーターがブーイングを浴びせていたらしい。判定が不服で審判にブーをするならともかく、選手にブーをするのはお門違いもいいところ。おそらくドイツの勝ち抜けを期待してこの試合のチケットを買ってあったが、対戦カードがスペイン対フランスになってしまい、うっぷんを晴らしたということか。

July 9, 2024

ガルシア=マルケス「百年の孤独」再読 その1 氷

●ガルシア=マルケスの「百年の孤独」(新潮文庫)をゆっくりと再読している。初読はもう30年以上も前のことで、水色と白の簡潔なカバーデザインだった。それから何度か改訳あるいは新装版が出たと思うが、なかなか文庫にならなかった。「文庫化される」という確からしい情報が出たこともあったが、それがどういうわけか立ち消えになったりして、そのうち「百年の孤独」は「文庫化したら世界が滅びる」などと言われるようになった。うかつにそんなことを言うものではないと思うのだが。そして、今年、ついに新潮文庫から発売されたわけだが、帯の惹句に「この世界が滅びる前に──」という一言が添えられていた。ええっ……。発売前から重版がかかる人気ぶり。
●初読では後半からページをめくる手が止まらなくなり、夜を徹して最後まで読み切って眩暈のような感覚を味わったが、再読は急がず、ゆっくりと読むことに。記憶に残っている部分とすっかり忘れている部分がある。ずっと昔に訪れた旅先にもう一度やってきたみたいな感覚だ。本を手にして思ったのは、意外と厚くない。いや、672ページの文庫本は厚いには違いないのだが、記憶ほど厚くない。厚い小説が増えたので、相対的に厚いと感じなくなっただけかもしれない。
●登場人物の表記が、最初に読んだときは「アウレリャーノ・ブエンディーア」だったと思うが、その後、改訳時に「アウレリャノ・ブエンディア」になったのだとか。音引きを削るだけで、全体で何ページだったか忘れたが、けっこう短くなるという話で、なるほど、それは冴えたアイディアだと思ったもの。もちろん、この文庫でも「アウレリャノ・ブエンディア」。音引きがないほうが表記として今風とも言える。
●ようやく、半分弱まで読んだ。ブエンディア家の家系図が最初に載っているので、これをなんども見返しながら読む。マコンドの街を創設した第1世代のホセ・アルカディオ・ブエンディア、その息子たちホセ・アルカディオやアウレリャノ・ブエンディア大佐の第2世代、アルカディオとアウレリャノ・ホセの第3世代の物語が綴られ、そろそろ第4世代のホセ・アルカディオ・セグンド、アウレリャノ・セグンド、小町娘のレメディオスが登場しつつある。「小町娘」っていう訳語がよい。
●序盤のハイライトは氷のシーンだと思う。探求心旺盛な第1世代のホセ・アルカディオ・ブエンディアがジプシーたちの市を訪れ(ここでメルキアデスの訃報を聞く)、子どもたちにせがまれて「メンフィスの学者たちの驚異の新発明」を見に行く。金を払ってテントに入ると、大男が海賊の宝箱のようなものを見張っており、ふたを開けると冷たい風がふきあげる。箱のなかにあったのは「夕暮れの光線がとりどりの色の星となって砕ける無数の針をふくんだ、透きとおった大きな塊」。ホセ・アルカディオ・ブエンディアはこれを「世界最大のダイアモンド」と呼んだが、大男が「そいつは氷だ」と諭す。ホセ・アルカディオ・ブエンディアはさらにお金を払って氷に触り、子どもたちの分も払って触らせる。息子のアウレリャノは氷に触って「煮えくり返ってるよ、これ!」と叫ぶ。

しかし、父親は息子の言葉を聞いていなかった。その瞬間の彼はこの疑いようのない奇蹟の出現に恍惚となって、熱中した仕事の失敗のことも、烏賊の餌食にされたメルキアデスの死体のことも忘れていた。彼はもう一度、五レアルのお金を払って氷塊に手をあずけ、聖書を前に証言でもするように叫んだ。
「こいつは、近来にない大発明だ!」

このくだりを読んで、冷凍庫から氷を取り出して、ホセ・アルカディオ・ブエンディアごっこをしたくなったのはワタシだけではないはずだ。真夏ならなおさら。(つづく

July 8, 2024

EURO2024 スペイン、フランス、オランダ、イングランドが四強に

●週末の間にEURO2024、準決勝の4試合が行われた。4試合中3試合が延長に入る接戦。勝ち残ったのはスペイン、フランス、オランダ、イングランドで、いわゆる強豪国ばかりになったのは意外。各々の試合の中身を見た印象は決してそんな感じではなかったのだが。
スペイン●大一番はスペイン 2-1 ドイツ。どちらが勝ってもおかしくなかった。開催国ドイツが勝ったほうが大会としては盛り上がったことはたしか。ナーゲルスマン監督はまだ36歳。プロ選手経験はなく、監督としての手腕だけで頂点までのぼりつめた。こういう指導者はまだまだ日本からは出てきそうもない。
●スペインにペナルティエリア内でのハンドがあってPKが与えられるかと思ったが、主審もVARもあっさりとファウルなしの判定。ディフェンスが腕を身体に付けようとする途中でボールに当たったものだったので、これはファウルなしが妥当だろう。これでPKをもらえるならゴールを狙うより、ディフェンダーの腕を狙って蹴ったほうが簡単だという話になりかねない。腕をあげたり開いたりしていないなら、当たってもPKにする必要はないというのが自分の感覚。
フランスポルトガル 0-0 フランスはPK戦でフランスが勝ち抜け。かなり慎重な試合。クリスチャーノ・ロナウドはずっと試合に出続けているが、往年の迫力はすっかり失われた。ロベルト・マルティネス監督がなぜクリスチャーノを外さないのか、大いなる謎。
イングランドイングランド 1-1 スイスは質が高く、見ごたえのある試合。全般にスイスのほうが内容で勝っていると感じたのだが、イングランドはPK戦で統計的に有利な先攻を得て、全員が成功して勝利。イングランドのキーパー、ピックフォードの水筒には、スイスの選手たちのPKの得意コースを記した紙が貼ってあり、実際にそれに従って一本止めたという。そういう情報戦もおもしろいとは思うものの、やはりPK戦は不条理だと感じる。「サッカーで決着をつけた」感じがしない。延長に入ったら、9人対9人でプレイする、みたいな新ルールがほしい。
hollandオランダ 2-1 トルコ。先制したのはトルコだったが、後半に追いつかれて、さらにオウンゴールで失点して逆転されてしまった。終盤、怒涛の攻撃で得点できなかったのが惜しい。オランダの失点は一瞬、守備の勤勉さを欠いた場面。試合会場はベルリン。トルコは準ホームゲーム的な戦いをできたわけだが、ドイツともどもベスト8で大会を去ることに。決勝がドイツ対トルコになれば熱かったが、そうはならず。

July 5, 2024

ヤクブ・フルシャ指揮東京都交響楽団のブルックナー「ロマンティック」

ヤクブ・フルシャ 東京都交響楽団
●4日はサントリーホールでヤクブ・フルシャ指揮都響。先日は珍しい曲が並んだチェコ音楽プログラムだったが、今回はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番(五明佳廉)とブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」(コーストヴェット:1878/80年)。これは一般的な第2稿で、2018年刊行の校訂版。同一プログラムで2公演あるが、チケットは完売。コンサートマスターに矢部達哉、トップサイドに水谷晃の強力布陣。
●ブルックでは五明佳廉がスケールの大きな表現で、かなり濃厚な味わい。鋭く芯の強い音。これにオーケストラも雄大なサウンドでこたえる。もともとシンフォニックな協奏曲だが、これだけたっぷりと鳴らした演奏はなかなか聴けない。アンコールが意外な路線で、ピアソラのタンゴ・エチュード第3番。無伴奏ヴァイオリンで聴くピアソラはかなり新鮮な感じがする。
●後半のブルックナー「ロマンティック」は重厚というよりは強靭。剛性が高い。一般的にこの曲に期待される深い森や大自然を思わせる響きや、音の大伽藍といった荘厳さは希薄で、むしろヒロイックで直線的なドラマに貫かれている。とくに終楽章は熱く、ベートーヴェン的な歓喜とか勝利のような人間的な高揚感があって、この作品に叙事詩的な性格を読みとることもできるのかもしれないと思った。
●終演後は早々に席を立つ人とずっと拍手を続ける人に二分された感じ。熱烈な喝采に応えて、フルシャのソロ・カーテンコールに。
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●EURO2024は二日間のお休みを経て、本日の深夜から準々決勝。いきなりスペイン対ドイツのビッグマッチで始まる。明朝、時間差観戦するので、うっかり結果バレしないように気をつけねば。

July 4, 2024

EURO2024 決勝トーナメント ルーマニアvsオランダ、オーストリアvsトルコ

●EURO2024のベスト8が出そろったので、試合は二日間お休みに。ふう。この間に仕事をがっつり進めておかないと……。
holland●ルーマニア対オランダは序盤こそルーマニアが攻めていたが、すぐにオランダが一方的に押す展開に。前半20分、ガクポが左から中に切れ込んでシュートして、あっさりと先制。後半に途中出場のマーレンが2ゴールを決めてオランダが快勝。いくぶんオランダが相手を弄んでいるかのような感も。ルーマニアはせっかくカウンターのチャンスが到来しても、慌てすぎてボールがつながらない。ルーマニア 0-3 オランダ
●ルーマニアの10番はハジ。あの往年の名選手ハジの息子なんだとか。フランスのテュラム、イタリアのキエーザと同様、2世選手が目立つ大会。
●ルーマニアの髪を青く染めている選手はアンドレイ・ラティウ。ゲーム好きで、ソニック・ザ・ヘッジホッグが青い髪のモデルなのだそう。
●オーストリアvsトルコはハイライトしか見ていないが、前半わずか1分でコーナーキックからデミラルが決めてトルコ先制。後半にも同じ形で追加点を奪って、1点を返されたものの完勝。オーストリア 1-2 トルコ。オーストリアは名将ラングニックを監督に迎えて、かなり上まで行くのはないかと思っていたので、ここでの敗退は惜しい。
●これでベスト8の組合せは、スペイン対ドイツ、ポルトガルvsフランス、オランダvsトルコ、イングランドvsスイス。ずいぶん各国の力の差が縮まった……と思っていたら、意外にもイタリア以外の伝統国がみんな勝ち進んできた。ただ、この大会、ワールドカップとちがってアウトサイダーが優勝することもあって、過去にはデンマークやギリシャがだれも予想しなかった優勝を果たしている。今回だってスイスやトルコがチャンピオンになる可能性は十分あると思う。

July 3, 2024

EURO2024 決勝トーナメント フランスvsベルギー、ポルトガルvsスロヴェニア

●EURO2024、意外と伝統国が勝ち残っているというのがここまでの大まかな印象。
フランス●ベスト16でいちばん注目度の高いのが優勝候補対決フランスvsベルギー。が、負けられない一発勝負にありがちだが、かなり渋い試合内容になってしまった。もともと両チームともイメージに反して、グループリーグで得点も失点も少なかったチーム。その両者が対戦。序盤から相手にほとんどハイプレスをかけないので、ディフェンスラインでゆっくりとボールを回せる。これくらいのレベルになると、下手にプレスをかけて後ろにスペースができてしまうと餌食になるということなのか、あるいは消耗を避けたかったのか。終盤になってようやくスペクタクルが見られるようになったが、結局のところフランスの枠内シュートは2、ベルギーは3。勝敗を分けたのは後半40分、フランスのコロムアニのシュートがディフェンスに当たってコースが変わりオウンゴールになった。フランス 1対0 ベルギー。ベルギーには不運なゴールだったが、全般に消極的すぎたか。
●今大会では、キャプテン以外が主審に抗議をするとイエローカードが出るルールになっている模様で、これはアジアカップやJリーグでも採用してほしい名案だと思った。これで選手たちが主審を囲んでプレッシャーを与えるなんてことはなくなるはず。この試合でもフランスのチュアメニの抗議にサクッとイエローが出た。ただこのルールだと、ゴールキーパーがキャプテンだと少し困ったことにならないだろうか。前線でなにかあっても遠すぎるので。
ポルトガル●ポルトガル対スロヴェニアはハイライトで。ポルトガルは他のメンバーがターンオーバーしているのに、39歳のクリスチャーノ・ロナウドだけが先発しつづけている。まるでアンタッチャブルな存在であるかのよう。攻めるポルトガルと堅守速攻のスロヴェニアという構図だが、むしろスロヴェニアがカウンターの決定機を外し続けたという印象。0対0で延長に入り、クリスチャーノがPKを蹴るも、名手ヤン・オブラクに止められてしまう。ここで涙を流して泣くクリスチャーノをチームメイトが慰めるのだが、39歳の大ベテランがここまで感情的になる姿をどう受け止めればいいのか、よくわからない。どんなときもクリスチャーノは主役としてふるまう。延長後半、ペペのミスからスロヴェニアがビッグチャンスを迎えたがシュートを外してしまい、なにか締まらない雰囲気に。延長を終えて0対0。ところがPK戦になると、ポルトガルの守護神ディオゴ・コスタが3本連続ストップという神技を見せて、真のヒーローになった。これは伝説のはじまりかもしれない。でもスロヴェニアが決めるべきところで決めて勝つべき試合だったような気も。

July 2, 2024

EURO2024 決勝トーナメント イングランドvsスロヴァキア、スペインvsジョージア

●毎回のことだけど、EURO2024は時差が問題。深夜の生観戦はしない方針なので、結果バレしないように気をつけながら早起き時差観戦が基本。ここは一日遅れの観戦記。
イングランド●で、イングランドvsスロヴァキア。スロヴァキアは堅守速攻に徹して、前半のボール支配率が25%しかなかったのにシュランツのゴールで1点リード。パス本数がかなり少なく、守備はハードでやや荒っぽい。後半、少しエネルギーが足りなくなってきたが、どんどん時計の針が進んで、そのまま勝ちそうで、なんだか町田みたいなチームだなと思っていたら、笛が鳴る寸前の後半50分、イングランドがベリンガムのミラクルなオーバーヘッドで追いつく。退屈な試合が伝説になった。さらに延長に入ってすぐに空中戦からハリー・ケーンが頭で合わせて逆転。スロヴァキアが勝っていてもまったくおかしくない試合だったが、「もっと見たい」のはイングランド。イングランド2対1スロヴァキア。次はイタリアを破った強敵スイスと対戦する。
スペイン●スペインvsジョージアはセルフハイライトで見たが、スペインが勝つべくして勝った。オウンゴールでジョージアが先制したが、その後スペインが4ゴール。スペイン4対1ジョージア。スペインは第3戦で10人を替えるターンオーバーを敢行したので、この試合はみんな9日ぶりの試合でフレッシュ、コンディションがよさそう。左右の若いウィンガー、ニコ・ウィリアムズ(21歳)とラミン・ヤマル(16歳)の突破力が強烈。それにしても16歳とは。大会に学校の宿題を持ち込んで、オンライン授業も受けているそう。次は中4日で開催国ドイツが相手の大一番。

July 1, 2024

ヤクブ・フルシャ指揮東京都交響楽団のオール・チェコ・プログラム

ヤクブ・フルシャ指揮東京都交響楽団
●28日は東京芸術劇場でヤクブ・フルシャ指揮東京都交響楽団。平日昼間の公演、しかも有名曲のないオール・チェコ・プログラムだが、お客さんはよく入っていた。生誕200年を迎えたスメタナのオペラ「リブシェ」序曲で華やかに幕を開け、ヤナーチェク(フルシャ編曲)のオペラ「利口な女狐の物語」大組曲(日本初演)が続き、休憩をはさんでドヴォルザークの交響曲第3番。どれもめったに聴けない曲ばかり。「リブシェ」序曲、ファンファーレが比較的知られているとはいえ、全曲をライブで聴いたのは初めてかも。
●最大の注目はヤナーチェク(フルシャ編曲)のオペラ「利口な女狐の物語」大組曲。ヤナーチェクのオペラをどうにかしてオーケストラのレパートリーにできないかというのは多くの人が思うところで、「利口な女狐の物語」にも既存の組曲がいくつかあるのだが、決定版に至っていない。そこでフルシャが編んだのがこの大組曲。オペラの時系列に従った順で30分以上にわたる長さ。これで物足りなさが解消する、と期待していたのだが、実際に聴くと尺がこれだけあるなら歌も欲しくなってくる。フルシャによればこの大組曲には任意にカットできる場所をたくさん設けてあるそうなので、うまくカットすればバランスがよくなるかも。演奏は申し分なし。
●ドヴォルザークの交響曲第3番はいまだ成熟する前の意欲作。スケルツォ相当の楽章がない3楽章構成。第2楽章アダージョが入念で、オペラの一場面風。第3楽章の田舎のお祭り感が楽しい。フルシャと都響のサウンドは、土臭いというよりは洗練されて爽快。最後は大いに盛り上がった。なんと、フルシャのソロ・カーテンコールあり。7年ぶりに帰ってきたかつての首席客演指揮者を称えた。今やフルシャはベルリン・フィルの常連指揮者で、25/26シーズンからはロイヤル・オペラの音楽監督。多くの人が予想していた通り、ビッグネームになった。
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ドイツ●EURO2024は決勝トーナメントへ。スイス対イタリアは2-0。結果でも内容でもスイスが相手を上回って完勝。前回王者イタリアは選手をだいぶ入れ替えてきたが、プレイにダイナミズムを欠き、試合巧者ぶりを発揮できず。個の能力でも強度でも一歩及んでいない。3バックと変則4バックを併用してきたディフェンスラインだが、この日の4バックは連携がいまひとつ。もう一試合、ドイツ対デンマークは2-0で、無事に開催国が勝利。デンマークは不運なハンドでPKをとられてしまったが、VAR時代ならではの意味レスなファウル。たしかにボールが手をかすめているだろうが、それが本質的にファウルに値する事象なのか。現状、偶発的ハンドによるPKが試合に与える影響が大きくなりすぎていると思う。「つま先の数センチのオフサイド」もそうだが、VARを前提としたルールの再検討が必要なのでは。

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