●28日は東京芸術劇場でヤクブ・フルシャ指揮東京都交響楽団。平日昼間の公演、しかも有名曲のないオール・チェコ・プログラムだが、お客さんはよく入っていた。生誕200年を迎えたスメタナのオペラ「リブシェ」序曲で華やかに幕を開け、ヤナーチェク(フルシャ編曲)のオペラ「利口な女狐の物語」大組曲(日本初演)が続き、休憩をはさんでドヴォルザークの交響曲第3番。どれもめったに聴けない曲ばかり。「リブシェ」序曲、ファンファーレが比較的知られているとはいえ、全曲をライブで聴いたのは初めてかも。
●最大の注目はヤナーチェク(フルシャ編曲)のオペラ「利口な女狐の物語」大組曲。ヤナーチェクのオペラをどうにかしてオーケストラのレパートリーにできないかというのは多くの人が思うところで、「利口な女狐の物語」にも既存の組曲がいくつかあるのだが、決定版に至っていない。そこでフルシャが編んだのがこの大組曲。オペラの時系列に従った順で30分以上にわたる長さ。これで物足りなさが解消する、と期待していたのだが、実際に聴くと尺がこれだけあるなら歌も欲しくなってくる。フルシャによればこの大組曲には任意にカットできる場所をたくさん設けてあるそうなので、うまくカットすればバランスがよくなるかも。演奏は申し分なし。
●ドヴォルザークの交響曲第3番はいまだ成熟する前の意欲作。スケルツォ相当の楽章がない3楽章構成。第2楽章アダージョが入念で、オペラの一場面風。第3楽章の田舎のお祭り感が楽しい。フルシャと都響のサウンドは、土臭いというよりは洗練されて爽快。最後は大いに盛り上がった。なんと、フルシャのソロ・カーテンコールあり。7年ぶりに帰ってきたかつての首席客演指揮者を称えた。今やフルシャはベルリン・フィルの常連指揮者で、25/26シーズンからはロイヤル・オペラの音楽監督。多くの人が予想していた通り、ビッグネームになった。
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●EURO2024は決勝トーナメントへ。スイス対イタリアは2-0。結果でも内容でもスイスが相手を上回って完勝。前回王者イタリアは選手をだいぶ入れ替えてきたが、プレイにダイナミズムを欠き、試合巧者ぶりを発揮できず。個の能力でも強度でも一歩及んでいない。3バックと変則4バックを併用してきたディフェンスラインだが、この日の4バックは連携がいまひとつ。もう一試合、ドイツ対デンマークは2-0で、無事に開催国が勝利。デンマークは不運なハンドでPKをとられてしまったが、VAR時代ならではの意味レスなファウル。たしかにボールが手をかすめているだろうが、それが本質的にファウルに値する事象なのか。現状、偶発的ハンドによるPKが試合に与える影響が大きくなりすぎていると思う。「つま先の数センチのオフサイド」もそうだが、VARを前提としたルールの再検討が必要なのでは。
July 1, 2024