amazon
August 6, 2024

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2024 佐渡裕指揮PACオーケストラ

サマーミューザ 佐渡裕 PACオーケストラ
●5日はミューザ川崎でフェスタサマーミューザKAWASAKI。首都圏のオーケストラが競演する音楽祭だが、今年はゲスト枠として兵庫から佐渡裕指揮PACオーケストラが招かれた。兵庫芸術文化センター管弦楽団、通称PACオーケストラ。首都圏ではなじみが薄いかもしれないが、地元での人気ぶりはすさまじく、なんと定期公演が常に同一プログラム3公演で、各2000席が完売する。定期公演で同一プログラムを同一会場で3公演開いているオーケストラは東京にもない。佐渡裕芸術監督が率いるこの楽団はアカデミーオーケストラとしての性格を持っていて、オーディションで選ばれた若い奏者が3年期限で在籍する。メンバーは国際色豊か。ここを卒業して、日本あるいは世界各地のプロオーケストラで活躍する例も多い。この日のコンサートマスターは田野倉雅秋。要所には実績のあるプレーヤーも加わている模様。
●で、この日のプログラムは前半がアルチュニアンのトランペット協奏曲とベルシュテッドの「ナポリ~トランペットのためのナポリ民謡の変奏曲」で、ソリストのセリーナ・オットが大活躍。後半はがらっと雰囲気が変わってシェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」。これは兵庫での定期公演のプログラムをそのまま持ってきている。なので、PACオケはシェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」を定期で3回、サマーミューザで1回、計4回も演奏しているわけだ。いやー、本当にすごい。特大編成で、しかも人気の高いとはいえない曲を、これだけ多くの人に聴いてもらえるとは。楽団の底力を感じる。さすがにアウェイの川崎まで満席にはならないが、健闘。
●この日の公演については別の場所で書くことになっているのだが、備忘録的に記しておくと、感心したのはシェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」を演奏する前に、佐渡さんが各登場人物や情景をあらわすライトモチーフを演奏付きで紹介してくれたこと。これはすごくいい。この曲の場合(切れ目なく40分以上続く)、事前の理解がある程度ないと聴く側は迷子になってしまいがちで、これほど有用なガイドはないだろう。曲を知っているお客さんにとっても、「ああ、ペレアスの動機ってこんなんだったよなー」って思い出せるのはありがたいこと。ホスピタリティを感じる。
●前にも書いたけど、「ペレアスとメリザンド」って、やたらと物が落ちる。メリザンドは最初のゴローとの出会いで王冠を落とすし、ペレアスと遊んでいて指輪を落とす。塔の上からは長い髪を垂らす。メリザンドの動機も下行する。位置エネルギーが哀しみに変換される物語。
●なんと、アンコールが2曲もあった。大編成ゴージャスサウンドでハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」のワルツ、さらには「すみれの花咲く頃」という曲を、佐渡裕のピアニカソロ付きで。曲の途中でサプライズでピアニカが出てきた。まさかシェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」の後にアンコールがあるとは思わなかったが、最後は開放的な気分で終わろうっていうことなのかな。一理あるけど、びっくり。