●9日はサントリーホールでダニエル・ハーディング指揮東京都交響楽団。来日の多いハーディングだが、都響とはこれが初共演。チケットは完売。プログラムはベルクの7つの初期の歌(ニカ・ゴリッチのソプラノ)、マーラーの交響曲第1番「巨人」。ベルクは初期作品で1905年から1908年にかけての作曲、マーラーは最終稿の初演が1896年。両者の距離は案外近い。ニカ・ゴリッチは温かみのある声。長い曲ではないので、もう少し聴きたくなる。マーラー「巨人」はハーディング得意のレパートリー。若い頃からいろんなオーケストラでこの曲をとりあげている。都響もマーラー・オーケストラといってもいいくらいにマーラー演奏の伝統を持っていると思うが、ハーディング印がしっかり刻印された「巨人」に。どこのオーケストラでも自分の「巨人」が再現できる十八番といった様子。細部まで意匠が凝らされているが決して神経質ではなく、むしろ全体としては直線的に驀進する劇的なマーラーで、客席はかなり湧いた。ハーディングのソロカーテンコールあり。
●第1楽章の途中で地震があった。最初、四方からザワザワザワザワという音が響いて、なんの音かまったくわからず(一瞬、演出なのかと思ったくらい)、しばらくすると客席が揺れ出した。どうやらあれは緊急地震速報だったらしい(自分の周りではだれも鳴っていなかった)。前日に宮崎県で震度6弱の揺れがあり、南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震が発生する可能性が相対的に高まっているという警告が出されたばかり。公演中なので、震源がどこかを知る方法がない。九州も気になるが、正月以来ずっと能登も気にかかっている。震源が遠方にもかかわらず東京が揺れた場合は大地震の恐れがあるので、演奏中も気になってしかたがなかった。公演後、あわててスマホで気象情報を確認すると、震源は神奈川県西部で最大震度5弱。マグニチュードは5.3と特別大きくはなく、南海トラフとは無関係だった。
●大地震ではなかったので安堵したが、311以来、ハーディングと地震のジンクスがここまで続いていることには驚かずにいられない(思い出すのは、311前日のハーディングの新日本フィルMusic Partner就任記者発表)。すべて偶然であることはわかっているのだが、それにしても。
August 13, 2024