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August 30, 2024

サントリーホール サマーフェスティバル 2024 アーヴィン・アルディッティがひらく オーケストラ・プログラム

●29日はサントリーホールサマーフェスティバル2024のザ・プロデューサー・シリーズ「アーヴィン・アルディッティがひらく」オーケストラ・プログラム。アルディッティ弦楽四重奏団とブラッド・ラブマン指揮東京都交響楽団が出演。先週のフィリップ・マヌリ オーケストラ・ポートレートは東響だったけど、今回は同じ指揮者で都響。プログラムは前半が細川俊夫「フルス(河)~私はあなたに流れ込む河になる」(2014)、クセナキスの「トゥオラケムス Tuorakemsu」(1990)、後半がクセナキス「ドクス・オーク」(1991)、フィリップ・マヌリの「メランコリア・フィグーレン」(2013)。細川作品とマヌリ作品が弦楽四重奏とオーケストラのための作品。弦楽四重奏+オーケストラという組合せ、いかにも重複的で、オーケストラの弦楽セクション自体が弦楽四重奏を内包しているんだから約分できないのかとつい思ってしまうが、両者の響きの同質性を逆手に取ってシームレスな響きの遠近法を作り出せるのかもしれないし、作り出せないのかもしれない(どっちなんだ)。
●楽しかったのはクセナキスの両曲。「トゥオラケムス Tuorakemsu」は武満徹60歳を祝った作品で、曲名をぱっと見てToru Takemitsuのアナグラムになっているのかなと思いきや、なっていない。曲目解説によればToru Takemitsuの文字をギリシャ語風にしたアナグラムなのだとか。90人の奏者を要する3分ほどの短い曲。一種のファンファーレだろうが、東洋的な響きが思いのほか前面に出ていて、クセナキスとジャポニズムの不思議な合体技。後半の「ドクス・オーク」はアーヴィン・アルディッティがソリストを務めるヴァイオリン協奏曲スタイルの作品。渾身のソロとキレのあるオーケストラの対話。発話的なフレーズの応酬が続くのだが、こういう音楽を聴くと、つい日本語のセリフを当てはめながら聴いてみたくなる。たとえば、オーケストラ「お腹、空いてないのー?」、独奏「ハ・ラ・ペ・コ、だよー」みたいな。マヌリ作品、先週は豊饒な響きの海みたいな曲だったが、今回は弦楽四重奏とオーケストラのための曲ということもあり、もっとミクロコスモス的で、7つの多様なセクションからなる。細川、マヌリともに作曲者臨席。
●きわめてゆっくりと進む台風が九州を北上し、日本列島は広範囲で大雨。「遠隔豪雨」という言葉を知る。ひどい水害がないことを願う。