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September 9, 2024

マクシム・エメリャニチェフ指揮読響、マハン・エスファハニ

●5日はサントリーホールでマクシム・エメリャニチェフ指揮読響。メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」、チェコの作曲家ミロスラフ・スルンカ(1975~ )のチェンバロ協奏曲「スタンドスティル」日本初演(マハン・エスファハニ)、シューベルトの交響曲「グレイト」というプログラム。鬼才の呼び声高いエメリャニチェフとエスファハニを一度に聴けるお得な機会。
●スルンカのチェンバロ協奏曲「スタンドスティル」は23分ほどのそこそこ大仕掛けの作品。チェンバロ用にPAも入る。弦楽器奏者たちがゆで卵カッター(金属部分、たぶん)を使ったザワザワとした音を敷いたところにチェンバロ奏者が信号音的な同音連打を重ね、やがて無機的な断片的パッセージの反復を基調としたゆるやかな音響の波を作り出す。チェンバロの音色がきらきらとした輝きを放ち、ときには発話的、ときには吃音的なパッセージをくりかえす。打楽器奏者たちがプラスチックの下敷きのようなものを歪ませてブワブワと音を鳴らし、これと対話するようにチェンバロ奏者が応答する。チェンバロは発音なしの打鍵音を出したり、肘を使って鍵盤を叩くなど自在の表現。全般に響きのおもしろさに焦点が当てられているが、これだけの長さがあると構成感という点ではどうなのかな。もう少しチェンバロの近くで聴けばまた違った感興がわいたかも。エスファハニは電子楽譜を使用。曲が終わったところで思わせぶりな態度をとらずに、さっと「はい、おしまい」みたいなポーズを見せたところは好感。作曲者臨席。
●エスファハニのソリスト・アンコールあり。パーセルのグラウンドを弾いて、これで前半は終わるかと思ったら、そこからラモーのガヴォットと6つの変奏が始まった。それ弾くなら、一曲だけでもよくない?とは思ったけど、熱々の演奏で大いに盛り上げてくれた。風貌に身近なオッチャン感があるんだけど、魅せて沸かせる人であった。
●と、長々と書いてしまったが、スルンカの協奏曲よりも、だんぜんおもしろかったのがエメリャニチェフの指揮で、メンデルスゾーンといい、シューベルトといい、まったく常套的ではない。綿密に響きを磨き上げるタイプではないが、自在にテンポを伸び縮みさせながら、今そこで音楽が生み出されている喜びを感じさせてくれる。指揮ぶりにアーノンクールを連想。「グレート」はコンパクトで、弦は10型だったかな? 対向配置、後列にコントラバス4台を横一列に並べるスタイル。指揮棒も指揮台もなし。俊敏で鮮烈、快速テンポでリピートあり、長大な曲をまったく退屈させずに聴かせてくれた。楽しい。