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September 13, 2024

石上真由子&中恵菜&佐藤晴真の弦楽三重奏

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●12日はHakuju Hallで石上真由子(ヴァイオリン)、中恵菜(ヴィオラ)、佐藤晴真(チェロ)のトリオ。新旧ウィーン楽派の弦楽三重奏曲のみで構成される硬派なプログラムだが、客席は盛況。ウェーベルンの弦楽三重奏曲、シューベルトの弦楽三重奏曲第1番変ロ長調D471(未完)、シェーンベルクの弦楽三重奏曲、休憩をはさんでベートーヴェンの弦楽三重奏曲第1番変ホ長調op3。練り上げられたプログラムといった感で、弦楽三重奏にこれだけ豊かな世界が広がっていることを初めて実感。同じ新ウィーン楽派といってもウェーベルンとシェーンベルクの描く世界は対照的で、シェーンベルクのひりひりとするような熱さを堪能。
●白眉は後半のベートーヴェン。作品3という初期作品、しかも全6楽章という多楽章から、漠然とディヴェルティメント風、セレナーデ風の軽い音楽のような先入観を抱いてしまっていたのだが、ぜんぜんそうではなく、きわめて鮮烈で雄弁。第1楽章のアレグロ・コン・ブリオは本当にコン・ブリオで中期作品を先取りするかのよう。奇をてらうところのない正攻法のベートーヴェンで、各楽章のキャラクターがよく伝わる内容の濃い音楽。パッション、ユーモアも十分。弦楽四重奏はどんなに第1ヴァイオリンのキャラが立っていても「集合体」って感じだけど、弦楽三重奏は3人が全員主役というか、各人それぞれのパーソナリティが表に出る音楽だなと感じる。その点でもこの3人は超強力。
●感心したのは終わった後にアンコールではなく、撮影タイムがあったこと。意表を突かれたけど、これはすばらしいアイディアだと思った。本編が充実している場合、欲しいのはオマケではなく、お土産なのだ。Googleフォトがライフログ化している今日、写真にまさるお土産はない。石上さんのトークが上手なこともあって、とてもいい雰囲気で終演。