amazon
September 17, 2024

ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団のブルックナー交響曲第8番(初稿)

ファビオ・ルイージ NHK交響楽団
●14日はNHKホールでファビオ・ルイージ指揮N響。曲はブルックナーの交響曲第8番(初稿)のみ。ブルックナー生誕200年の今年、新シーズンの開幕にふさわしい大曲であるが、なんと、初稿なのだ。録音ではともかく、ライブで聴く機会は貴重。N響にとってもこれが初めての演奏だったとか。熱気にあふれ、緻密というよりは強靭なブルックナーに。
●一般的な改訂稿と比べると、大まかなアウトラインは同じなのに、オーケストレーションが違ったり、局所的にまったく異なる楽想が出てきたりして、まるでパラレルワールドに迷い込んだような不思議な感覚になる。大きな違いは第1楽章の終結部で、通常は静かに終わってエネルギーを溜めるような感があるんだけど、この初稿では長調でパワフルに楽章を閉じて、はっきり区切りをつける。第2楽章はスケルツォで同じように始まるけど、トリオがまったく違う。ここは改訂稿のトリオのほうがだんぜんよくできてるんじゃないだろうか。第3楽章は長大な緩徐楽章。全曲の白眉であるのみならず、ブルックナーの全交響曲のなかでも、とりわけインスピレーションに富んだ楽章。この初稿ではクライマックスでシンバルの3連発×2がある。すごい念押し感。ブルックナーの作風としては過剰に感じるが、当初の構想としてこういう形が採用されていたという事実は興味深い。全体として、やっぱり改訂稿は数段練り上げられていると実感する。ただ、初稿には初稿にしかない粗削りの魅力があることもたしか。
●曲が終わった瞬間、客席は拍手をしたい少数の人と沈黙したい多数の人に分かれた。威勢よく終わるので、拍手が出ても不思議はないとは思った。その後、大喝采。