●26日はサントリーホールでアントニオ・パッパーノ指揮ロンドン交響楽団。前回の来日ではサイモン・ラトルに率いられてやってきたロンドン交響楽団だが、今回は新しい首席指揮者であるパッパーノとともに来日。パッパーノはサンタ・チェチーリア管弦楽団やロイヤル・オペラとの来日公演の印象が強いけど、ロンドン交響楽団のシェフになるとは。もっともイギリス出身なので、ラトルと同様、「里帰り」を果たしたことになるわけだ。
●プログラムはベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」、ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番(ユジャ・ワン)、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付」(オルガン:リチャード・ゴーワーズ)。来日オーケストラのソリストとして聴く機会の多いユジャ・ワンだけど、自分が前回聴いたのは5年前のLAフィルとのジョン・アダムズなので久々。今回はラフマニノフの作品1であるピアノ協奏曲第1番。アスリート的な俊敏さはまだまだ健在で、洗練された鮮やかなラフマニノフ。成熟したけど、流儀は変わっていない。歩きづらそうなハイヒールもミニスカートも左右非対称の高速お辞儀も以前と同じ。ただ、あの高速お辞儀、以前とまったく同じではないと思うんすよね。だれにも等しく時は流れている。ソリストアンコールとして、グルック~ズガンバーティ編の「精霊の踊り」を弾いて、曲が終わったらそのまま続けて、シューベルト~リスト編の「糸を紡ぐグレートヒェン」へ。こんなふうに2曲弾く手があったとは。カーテンコールの時間を省略できてお得!……ってのは違うか。どちらもしっとりとして情感豊か。
●サン=サーンスの「オルガン付」ではオーケストラの澄明なサウンドを堪能。オーケストラの基本的なキャラクターは前回の来日公演と同様の印象で、解像度が高く、透明感があるのに密度が濃い。パッパーノがサンタ・チェチーリア管弦楽団を指揮したときのような原色のカラフルさではなく、パステルカラーのようなエレガントな色彩感があって、すっきりとスマート。白眉は第1楽章後半の瞑想的なアダージョ部分で、磨き上げられたサウンドは驚異的。ここまでできるのは最高峰のオーケストラだけ。終盤は勢いが勝った感もあったが、随所にパッパーノのカラーも。アンコールはフォーレの「パヴァーヌ」。すごい完成度。これは前回の来日時にラトルの指揮でもアンコールで聴いた曲。弦は対向配置、コントラバスは上手。
●開演時の楽員の入場がアメリカのオーケストラと同じ方式で、みんなばらばらに入ってきて、いつの間にか全員そろっている。で、コンサートマスターが登場するよりも前にチューニングをする(トップサイドの奏者が立って合図を送る)。チューニング後、コンサートマスターが入場して、拍手。いろんなやり方があるものだな、と。
September 27, 2024