●27日は東京オペラシティでバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の定期演奏会。曲はバッハのミサ曲ロ短調。指揮は鈴木雅明。ソプラノに松井亜希、マリアンネ・ベアーテ・キーラント、アルトにアレクサンダー・チャンス、テノールに櫻田亮、バスに加耒徹。やはりロ短調ミサはよい。旧作の転用を多く含み複雑な成立の経緯をたどっているにもかかわらず、冒頭からおしまいまで一本の力強いドラマで貫かれているように、いつも感じる。「マタイ受難曲」や「ヨハネ受難曲」と違ってアウェイ感に苛まれずに済むのも大きい。鳥肌ポイントはいくつもある。冒頭のキリエの身の引き締まるような峻厳さ、上機嫌のクレドの開始部分。少しひなびた調子のバスのアリア(コルノ・ダ・カッチャのオブリガートは福川伸陽)から一転して快速のCum Sancto Spirituの合唱に突入する部分の鮮烈さは、この曲のハイライト。めちゃくちゃカッコいい。BCJはいつものように熱くエネルギッシュで、一段とキレがあったようにも。合唱の純度の高さも見事。ここで猛烈に盛り上がった後、「クレド」でふわっと温かい雰囲気になるのも好き。
●「アニュス・デイ」のアルト独唱は極上の美しさ。カウンターテナーのアレクサンダー・チャンスは、あのマイケル・チャンスの息子さんなのだとか。マイケル・チャンスはフランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラのロ短調ミサで歌っていて、自分がこの曲に魅了されるきっかけとなった録音。記憶だけで比較すると、アレクサンダーの声はお父さんほど甘くなく、より清澄でくっきりした印象。でも記憶だから実際に聴いたら違うかも。
September 30, 2024