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October 21, 2024

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団のオネゲル&ブラームス

ブロムシュテット指揮N響
●19日はNHKホールでヘルベルト・ブロムシュテット指揮N響。97歳のマエストロが2年ぶりに登場。袖から姿を見せた瞬間に、客席から熱狂的な拍手が沸き起こった。わかる。ここに来ているということだけでもすでに尊い。97歳で日本までやってきて、3プログラム6公演を指揮するのだから。川崎洋介コンサートマスターに支えられての登場、座っての指揮。もちろん身振りは小さくなってはいるのだが、むしろ前回よりもフィジカル的にも音楽的にもエネルギーが増しているとすら感じた。ちなみに今回、カバーコンダクターとしてゲルゲイ・マダラシュの名が明記されていた。
●曲はオネゲルの交響曲第3番「典礼風」とブラームスの交響曲第4番。オネゲルは研ぎ澄まされた祈りの音楽。弦楽器が精緻で澄明。まったく弛緩したところのない、このコンビならではの集中度の高い名演だったと思う。そして、今この曲を聴くことの意味を考えずにはいられなかった。歴史を振り返る音楽ではなく、切実な今の音楽として響くことの受け入れがたさというか。終楽章のグロテスクな軍隊行進曲が最後は鳥の歌で救われるわけだが……。後半のブラームスも純度の高い音楽。第1楽章冒頭は室内楽的雰囲気の小さな音楽として始まったが、次第に白熱し、やがて強靭な音のドラマが浮き上がる。川崎コンサートマスターの腰を浮かせての熱いリードはいつものことなのだが、それでもオーケストラの献身性に胸を打たれる。
●終わった後は簡潔化したカーテンコール、さらにコンサートマスターに支えられてソロカーテンコールに。拍手にもニュアンスがあると思った。感謝とか敬愛とか、そういった拍手。