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October 22, 2024

アラン・アルティノグル指揮フランクフルト放送交響楽団

●21日はサントリーホールでアラン・アルティノグル指揮フランクフルト放送交響楽団。大活躍中のフランスの指揮者アルティノグルは今回初来日。パーヴォ・ヤルヴィ、オロスコ=エストラーダの後を継いで、フランクフルト放送交響楽団(hr交響楽団)の音楽監督を務めている。この日のプログラムはブラームスのヴァイオリン協奏曲(庄司紗矢香)、ムソルグスキー~ラヴェル編の組曲「展覧会の絵」。前半は庄司紗矢香のソロがあまりにすばらしくて、第1楽章が終わったところで拍手をしたくなった(実際にした人がいたけど、気持ちはわかる)。うまいだけではない渾身のブラームスで、濃密でパッションも豊か、それでいて音楽の流れが自然で無理がない。カデンツァの集中度の高さも印象的。有名曲だが、なかなかこれだけの演奏は聴けない。ソリスト・アンコールにレーガーの前奏曲とフーガop117-2より前奏曲。ブラームスの後に聴く曲として、その後継者を自認していたレーガーは納得の選曲。
●後半は一転して、名人芸に彩られた華麗な「展覧会の絵」。ラヴェルの巧みなオーケストレーションを満喫。オーケストラは芯のあるサウンドで、極彩色ではないが、心地よい味わい。外連味のない造形で「キエフの大門」は端正。ムソルグスキーの原曲にこれだけのイマジネーションを盛り込んだラヴェルの才気に思いを馳せずにはいられない。ピアノ曲を他人がオーケストラ用に編曲して、演奏会のメイン・プログラムに定着した例がほかにあるだろうか……と考えてみたが、思いつかない。アンコールにドビュッシーの「月の光」オーケストラ版。編曲者の名前は掲示されていなかった。カプレなのかな。
●近年、名前を目にする機会が多いけど、名前を覚えられない二大指揮者がアラン・アルティノグルとディマ・スロボデニュークだったけど、これでアルティノグルは覚えられた気がする。アルティノグルとアルティノグリュという表記の揺れがあるが、この初来日を機にアルティノグルで落ち着いてほしい。