●28日はトッパンホールでアンドレアス・シュタイアーのフォルテピアノ。2006年から続く「アンドレアス・シュタイアー プロジェクト」と銘打たれたシリーズ公演で、今回の来日ではトリオの日とソロの日の2公演あり。ソロの日を聴くことに。使用楽器は1820年製ヨハン・ゲオルク・グレーバー(オリジナル)。プログラムはモーツァルトの幻想曲ハ短調K475、C.P.E.バッハのピアノ・ソナタ ホ短調Wq59-1と幻想曲ハ長調Wq61-6、モーツァルトのピアノ・ソナタ ヘ長調K533+K494、休憩をはさんで、ハイドンの「アンダンテと変奏曲」ヘ短調、ベートーヴェンの6つのバガテルOp126。エマヌエル・バッハの両作品を別とすればなじみ深い曲が並んだプログラムで、身振りの小さな音楽というか、コンサートホールの音楽というよりは親密な家庭音楽風のプログラム。フォルテピアノの音色の多彩さが存分に生かされていて、とてもカラフル。随所に劇的なペダル効果が使われていた。どうやらペダルはたくさんあるっぽい。
●前半、モーツァルトの幻想曲の後、同じモーツァルトのソナタ ハ短調を続けるのではなく、気まぐれなエマヌエル・バッハの世界に迷い込むのが楽しい。後半、ハイドンの「アンダンテと変奏曲」は秀作ながらどこかきまじめな曲と思っていたけど、こんなにカッコよく聞こえるとは。ベートーヴェンの6つのバガテルを最後に置いたプログラムはなかなかないと思うが、さりげなく語りかけるような第1曲、思わせぶりではない端正な第3曲がよい。第4曲と終曲に漂うユーモアも吉。アンコールは1曲。モーツァルトの組曲ハ長調K399から第2曲アルマンド。微笑ましい擬バロック調。温かい気分で幕。
October 29, 2024