●31日は東京オペラシティでバッハ・コレギウム・ジャパン第164回定期演奏会。指揮は鈴木雅明。「メンデルスゾーン=バルトルディへ」と銘打たれたB→Bプログラムで、前半がバッハのカンタータ第80番「われらが神こそ、堅き砦」(W.F.バッハ稿)、後半がメンデルスゾーンの聖書の言葉にもとづく交響曲カンタータ「賛歌」。前半のカンタータ第80番は長男ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハが第1曲と第5曲にトランペットとティンパニのパートを書き加えた稿をもとにしているのだが、それに加えて第1曲で割愛されたオーボエ3本を復活させ、終曲の第8曲にもトランペットとティンパニを付加したBCJ独自稿が用いられた。トランペットとティンパニが入ると、一気に祝祭感にあふれた曲になる。トランペットとティンパニ、もともと旧バッハ全集に入っていて、フリーデマンの加筆だと判明して新バッハ全集で削られたそう。カール・リヒターとかヘレヴェッヘの録音だと入ってるみたいだけど、終曲にまで入っている録音はないのかな。
●メンデルスゾーンの交響曲第2番「賛歌」、交響曲として聴くとあまりに異質だけど、この日のプログラム表記のように交響曲カンタータ「賛歌」として聴くと腑に落ちそう。外見上は合唱付きの交響曲だけど、ベートーヴェンの「第九」とはぜんぜん意味合いが違うし、むしろ大規模カンタータの頭にシンフォニアが付いた曲。オーケストラのみの第1部は、弦楽器の澄んだ響きと管楽器のカラフルさが印象的。合唱の入る第2部はぐっとスケールが大きくなる。熱い。第6曲かな、テノールのソロからソプラノの一声を経て合唱に至る部分、ここはワーグナーのオペラみたいだと思った。ものすごくドラマティックで、ロマンティック。テノールはベンヤミン・ブルンス。ソプラノがジョナ・マルティネス、澤江衣里、アルトが青木洋也、バスが小池優介。万全の声楽陣で充実。
●冒頭、鈴木雅明さんの「今日はハロウィンで~」という意表を突いたトークがおもしろかった。ハロウィンの「ウィン」って、クリスマス・イヴの「イヴ」と同じ意味って、知らなかった……。「ハロウの日」(諸聖人の祝日)前夜がハロウィン。この諸聖人の祝日があったからこそ、10月31日が宗教改革記念日になったというお話(BCJのサイトにあるIKEさんのコミックを参照)。鈴木雅明さんが「今日はどなたも仮装していらっしゃっていませんが」と話して会場の笑いを誘っていたけど、そういえばそうだなー。だれもバッハのカツラを被ってないし、メンデルスゾーン・コスプレの人もいない。渋谷が「ハロウィンお休み」宣言したからといって、初台に仮装したバッハが集結する事態にはならなかった(なるわけない)。
November 1, 2024