●8日はサントリーホールでトゥガン・ソヒエフ指揮ミュンヘン・フィル。プログラムはブルックナーの交響曲第8番(ノーヴァク版/1890年稿)。ソヒエフがブルックナーを指揮するのは意外な感じもあるが、なにしろミュンヘン・フィルと言えばかつてのチェリビダッケのオーケストラ。とはいえ、チェリビダッケのブルックナーを思わせるほどの遅いテンポは予期していなかった。近年聴いた聴いたブルックナーのなかで、もっとも巨大な音楽。ゆっくりと一歩一歩踏みしめるように進む。推進性よりも音の永続性、一瞬一瞬の荘厳さが前面に出てくる。ソヒエフの濃密で粘性の高い音楽作りもあって、超重量級のブルックナーが生まれたが、オーケストラのサウンドは決して重くなく、むしろ明瞭で柔らかく壮麗。全曲で何分くらいあっただろうか。90分と100分の間のどこか。しかし、遅いといってもチェリビダッケのブルックナーとはぜんぜん違うかな。チェリビダッケのように超越的ではなく、もっとエモーショナル。
●好みの分かれるところかと思ったが、演奏が終わった後は完璧な沈黙が訪れ、その後に喝采。楽員退出後にソヒエフのソロカーテンコールになった。
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●宣伝。日本室内楽振興財団の広報誌「奏」で読み物「室内楽誕生!」を連載中。第3回は弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」。連載といっても年2回のペースで、自分がこれまでに経験した連載のなかで、もっともインターバルが長い。
November 11, 2024