●25日昼、ホテルオークラでサイモン・ラトル&バイエルン放送交響楽団2024年来日記者懇親会。ラトルの記者会見はこれまでにも何度か出席しているが、バイエルン放送交響楽団の首席指揮者としての登場はもちろん初めて。楽団のニコラス・ポント事務局とともに登壇。密度の濃い会見だったので、印象に残った事柄をいくつか。ラトル「バイエルン放送交響楽団を初めて聴いたのはリヴァプールでクーベリックが指揮した公演。そのオーケストラでいま自分が首席指揮者を務めている。これは大変光栄なことだと思っている」「このオーケストラには偉大なドイツ・オーストリア音楽の伝統がある。同時に現代音楽の分野でも高い技術を持ち、数々の新作を初演してきている。ガット弦で演奏してみようというクレイジーなアイディアも受け入れてくれる。こんなに好奇心旺盛なオーケストラを好きにならずにはいられない」。ポント事務局長からもラトルとオーケストラは「相思相愛の関係」といい、ヤンソンスの逝去、パンデミックといった辛い時期を乗り越えて、ようやく来日できたことを喜んでいた。
●前夜がミューザ川崎でのブルックナーの交響曲第9番だったので、質疑応答ではこの話題が中心。ラトル「ミューザ川崎はヤンソンスにとっても私にとっても世界でいちばん好きなホールのひとつ。いつもツアーではミューザ川崎で最高の演奏ができる。それはお互いの音が聞こえるから。同じことはボストンのシンフォニーホールでも起きる。われわれにとってホールは楽器のひとつ。だからホールが変わればおのずと演奏も変わる」
●ラトル「私がもっとも尊敬するブルックナー指揮者は97歳のブロムシュテット。彼ほどブルックナーを理解している指揮者はいない。それは古楽や教会音楽を知悉しているからだろう」「ブルックナーの交響曲第9番では、第4楽章補筆完成版と(今回のように)第3楽章までの演奏のどちらもあり得る。本来であればこの曲は交響曲第8番と同様の巨大な交響曲であるが、シューベルトの『未完成』のように第3楽章の終わり方もよいと思っている。どちらがよいのか、聴衆の間で今後も議論が続くだろう。第4楽章を聴いて、すごく変で尖がっているという人がいるが、それは第3楽章までも同じであって、単に慣れているに過ぎない。慣れれば第4楽章を受け入れられるようになる」
●ラトルは「心のなかでは35歳なのに、日本に来るようになってから40年以上経っていることに驚く」と語っていた。なんだか納得。フレッシュでオープンなマインドを失っていない。
November 26, 2024