●7日はサントリーホールでジョナサン・ノット指揮東京交響楽団。シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲(アヴァ・バハリ)とベートーヴェンの交響曲第5番「運命」というプログラム。シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲の独奏者は現在売り出し中の若手、スウェーデンのアヴァ・バハリ。この曲をすっかり手の内に入れている様子。12音技法を使った作品であるが、尖鋭さよりも、作品の抒情性あるいは官能性が浮かび上がる。シェーンベルクは演奏頻度からいえば後期ロマン派スタイルの作品で名を残した作曲家だと感じてたけど、生誕150年の今年はヴァイオリン協奏曲を2回も聴けた。もっともこの曲、晦渋ではある。ソリスト・アンコールはクライスラーのレチタティーヴォとスケルツォ。途中のファンファーレ風動機のところで、前にもアンコールで聴いたことがある曲だと思い出す。
●後半は「運命」。以前にも同コンビでとりあげていたと思うが、そのときは聴けなかったので、ふたたび演奏してくれて嬉しい。冒頭の運命の動機が少し特徴的で、おしりが心持ちクレッシェンド気味になる「飛び出す運命」。速めのテンポで機敏なのだが、鬼気迫るといった重さ一辺倒ではなく、ときには柔らかく、うねるようであり、息づくようでもある「運命」。ノットの動きにオーケストラが鋭敏に反映して、一体化している。第4楽章のピッコロがすごく効いていて、オーケストラが翼を広げて羽ばたいているみたいに聞こえる。ノット監督は26年3月の退任が発表済み。それが頭にあるからなのか、過去を振り返るようなしみじみした気分も感じてしまう。盛大な拍手喝采と、ソロ・カーテンコールあり。
●正味の演奏時間が短めのプログラムだと思ったけど、終わってみたらそんなに短くもなかった。ソリスト・アンコールもあったし、「運命」のリピートもあったので、そんなものか。
●翌日のミューザ川崎での同プログラムが期間限定でニコ響で公開されている。ありがたいことである。
December 8, 2024