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December 12, 2024

イザベル・ファウスト&ジョヴァンニ・アントニーニ指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコのモーツァルト

東京オペラシティ クリスマス仕様
●11日は東京オペラシティでイザベル・ファウストとジョヴァンニ・アントニーニ指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコによるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全曲演奏会の第2夜。第1夜は聴けなかったので、この日のみ。プログラムはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第2番ニ長調、グルックのバレエ音楽「ドン・ジュアンあるいは石の宴」、モーツァルトのロンド ハ長調K373、ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調「トルコ風」。舞台後方に管楽器用の雛壇が組んであるのだが、イル・ジャルディーノ・アルモニコの弦が立奏するため、雛壇がけっこう高く、横一列で並ぶ。弦は4-4-2-2-1、だっけ。
●モーツァルトのヴァイオリン協奏曲、ぜんぶ10代のごく短期間に作曲されているけど、第2番と第3番の間の跳躍がすごい。と、第2番を聴いて改めて実感。こういう機会でもないと聴けない曲。グルックの「ドン・ジュアンあるいは石の宴」は初めて聴いたかも。おもしろい。モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」と同じ題材だけど、こちらはバレエ音楽。とはいえ、一貫したストーリー性があり、音楽には物語に応じた描写性がある模様。モーツァルトのオペラがおどろおどろしいムードの序曲で始まって、最後はおめでたく幕を閉じるのとは反対で、グルックのバレエは調子のよい朗らかなシンフォニアで始まって、最後は突風が吹き荒れるような恐ろしい地獄の音楽で終わる。このあたりは人称の違いというか、モーツァルトのオペラはドン・ジョヴァンニが地獄に落ちて「ざまぁ」みたいな三人称視点だけど、グルックはドン・ファンの一人称視点で地獄を描いている。地獄の音楽の迫力はさすがアントニーニとイル・ジャルディーノ・アルモニコ。スペイン趣味も取り入れられた曲で、後半のトルコ趣味と呼応する。
●モーツァルトのロンド ハ長調K373は、いかにも協奏曲のフィナーレといった仕立て。ブルネッティが弾くために書いた曲ということだが、その際にはだれかの第1楽章と第2楽章がくっついていたのだろうか。「トルコ風」はかつて聴いたことのないほどヴィヴィッド。独奏ヴァイオリンもHIPなスタイルで、アンサンブルと一体となって作品に命を吹き込む。ノン・ヴィブラートをベースとしたざらりとした質感の響き、強いアクセント、大胆なダイナミズム。アントニーニの全身を使った指揮による抜群の推進力。アンコールは2曲。まずはファウストが無伴奏で、ニコラ・マッテイスSrのヴァイオリンのためのエア集よりパッサッジョ・ロット。これは以前にもファウストのアンコールで聴いた気がする。さらにもう一曲、全員でハイドンの交響曲第44番「悲しみ」より第4楽章。これも強烈な嵐のような音楽。大喝采。
●終了後、CD購入者にサイン会あり。長蛇の列ができていた。