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December 31, 2024

第54回サントリー音楽賞受賞記念コンサート 井上道義指揮読響

サントリー音楽賞受賞記念コンサート 井上道義指揮読響
●30日はサントリーホールで第54回サントリー音楽賞受賞記念コンサート 井上道義(指揮) 。かねてより発表されていた通り、これが井上道義の引退公演ということで、場内は特別な雰囲気。オーケストラは読響。プログラムは前半にメンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」、後半にシベリウスの交響曲第7番、ショスタコーヴィチの祝典序曲。最後のショスタコーヴィチを別とすれば、自然への畏怖と賛歌をテーマにしたプログラム。
●前半は弦楽器8型のコンパクトな編成。「フィンガルの洞窟」はかなり遅いテンポで始まり、暗い嵐の前兆のよう。「田園」の弦楽器は8-8-6-4-3、かな。対向配置。指揮台も置かず。OEK時代を彷彿させるスタイルで、ほとんど室内楽的。トランペット、トロンボーン、ピッコロが3楽章の途中から入場して舞台上手側に横一列に座るという演出。後半は指揮台あり、指揮棒あり。シベリウスの交響曲第7番は圧巻。読響の本領発揮で雄大で清冽。その後は引退公演ならではの祝祭の時間に。ショスタコーヴィチの祝典序曲ではなんと30名を超えるバンダがP席、LA席、RA席それぞれの後方に登場して、すさまじい音圧。しかも最後はくるりとマエストロがこちらを向いて指揮台に置いてあったシンバルを叩くという暴れっぷり。マイクを持って登場、「下品な曲でっせ」と紹介してアンコールにショスタコーヴィチの組曲「ボルト」より「荷馬車弾きの踊り」。これでもうおしまいといった様子で楽員とともに退出するが、ふたたび弦楽器奏者たちが姿を見せて着席、トレードマークとも言うべき武満徹の「3つの映画音楽」より第3曲「ワルツ」。いつもそうだが、踊るように指揮、さらには受け取った花束から花をまいたり、花束を客席に投げたり。指揮を終えて足を痛めた様子でコンサートマスターに抱えられてヒヤリとするが、すぐに立ち直り、これはジョークなのか本当に痛めたのか、さっぱりわからない。退場時にくるりと一回転して見せる。本当に最後の最後まで変わらない。前もって引退を発表し、その通りに引退するこれまでに指揮者がいただろうか。78歳。「老い」を見せなかった。これが引き際の美学と感じ入る一方で、どこかでまた舞台に戻ってくるかもしれないとも思う。
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●本日は大晦日。今年一年、お世話になりました。よいお年をお迎えください。年始は不定期更新で。

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