●アーティゾン美術館へ。現在開催中の展覧会は「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子─ピュシスについて」「ひとを描く」「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 マティスのアトリエ」。ここは同じチケットですべてを見ることができる方式。後ろのふたつが目当てだったが、行ってみたら「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」がおもしろくて、たっぷり時間を費やしてしまった。
●これは毛利悠子「Piano Solo: Belle-Île」。スクリーンに海辺の光景が映っていて、Bozakのレトロな雰囲気のスピーカーから波の音などが流れる。どうやらこの音に反応して、左のアップライトピアノから間歇的にポロンポロンと音が鳴る。どういうアルゴリズムで波の音からピアノの音を導いているのかはわからないが、とにかく波の音に呼応していることはわかる。音が出るといいつつも、むしろ寡黙で控えめなのがよい。あと、動画の音声を直接コンピューターに入力するのではなく、わざわざスピーカーで鳴った音をマイクで拾って入力しているというところが奇妙なノスタルジーを喚起する。椅子が置いてあるので、ゆっくりと楽しめるのが吉。
●こちらは同じく毛利悠子の「めくる装置、3つのヴェール」。ぶら下げられた3枚のモニター上に薄いヴェールのような3次元の形状が映し出されていて、なんだろうなと思ったら、床に3台のスキャナとサーキュレーターが置いてある。サーキュレーターの風に反応してふわりとヴェールが舞っているところを下からスキャンして、その形状を抽出して静止画としてモニターに表示している模様。ランダムにいろいろな形状がその場で生成されてゆく。動き続けるスキャナの勤勉さと、その生成物がすぐに消えてしまうという儚さとのコントラストに味わい。
●毛利悠子作品だけでほとんどお腹いっぱいになったのだが、「ひとを描く」と「マティスのアトリエ」も密度が濃い。上はベルナール・ビュッフェの「アナベル夫人像」(1960年)。ぱっと見、知ってる人かなって思う。