●年末年始に読んだ本その2。野崎まど著「小説」(講談社)。ほぼ予備知識なしで手にした一冊だが、途中からまったく予測していなかった方向に話が進んで、心底驚いた。だいたい小説のタイトルが「小説」。なんという豪胆なネーミングなのかと思ったが、読めば納得できる。たいへんおもしろい。
●テーマは小説そのもの。小説を読むことに魅入られた若者が、小説を通じて生涯の友と出会う。ともに本の世界にしか居場所を見つけられない不器用な若者同士。序盤の展開に藤本タツキ「ルックバック」を連想したのだが、やがて小説についての小説になるという点でモアメド・ムブガル・サールの「人類の深奥に秘められた記憶」を思い出し、最後はとある名作みたいだなと思った。渾身の一作であるにもかかわらず、話が長くなくて読みやすいのは大吉。ジャンルで括ってはいけないタイプの小説だと思う。
January 7, 2025