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January 10, 2025

Live Performance SHIBUYA 森山開次「死と乙女」

森山開次「死と乙女」●9日は渋谷区文化総合センター大和田のさくらホールで、Live Performance SHIBUYA 森山開次「死と乙女」。森山開次のダンスと演出、山根一仁と毛利文香のヴァイオリン、田原綾子のヴィオラ、森田啓介のチェロによる創作舞台「死と乙女」の世界初演。以前、同ホールで森山開次の「春の祭典」を観たが、今回はシューベルトの弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」の演奏に森山開次のダンスが加わる。
●公演は2部構成になっていて、前半は音楽のみ。田原綾子のヴィオラ独奏および毛利文香のヴァイオリンが加わっての二重奏。西村朗の「C線のマントラ」で始まり、ヴュータンの無伴奏ヴィオラのためのカプリッチョ、バルトークの「44のデュオ」より抜粋、實川風の「龍神喜雨」(委嘱新作)、ヘンデル=ハルヴォルセンの「パッサカリア」と続く。最初の西村作品は真っ暗な舞台から拍手なしで始まって劇的。野太く、しかしキレのある音はヴィオラならでは。決してヴァイオリンでは表現できない世界。實川作品はヴァイオリンとヴィオラを二頭の龍に見立てたもので、自在の飛翔感。イマジネーションを喚起する。
●後半は山根一仁、毛利文香、田原綾子、森田啓介の弦楽四重奏が通常通りに舞台上に配置され、同じ舞台で森山開次がさまざまな身体表現をくりひろげる。舞台奥に縦長の白っぽい長方形の物体が立っていて、始まる前はなんだかわからなかったが、曲が始まれば納得。ベッドを上から俯瞰した図なのだ。乙女となった森山がここに垂直に横たわるという図で第1楽章が始まる。第2楽章ではベッドから起き上がり、死神に誘われるままに舞台上を動き回る。乙女となり、ときに死神にもなり、「死と乙女」の情景が創造される。照明を駆使したシルエットの使い方も効果的。「春の祭典」と違って楽曲自体にストーリー性がなく、バレエ音楽でもないわけだが、古典的な形式感と身体表現が結びつきうるというのが大きな発見。音楽は切れ味鋭く、まっすぐに白熱する様が印象的。奏者からダンサーの姿は一部しか見えないはずだが、明らかにダンスに触発された音楽が生み出されていた。