●16日はサントリーホールのブルーローズで山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団記者会見。6月から7月にかけて開催されるバーミンガム市交響楽団(以下CBSO)の来日公演に先立って、山田和樹が記者会見に登壇。今回の日本ツアーについて、そしてロームミュージックファンデーションの協力を得て行う「RMF&山田和樹グローバルプロジェクト」の取り組みが語られた。
●会見の冒頭がいきなり「パーマン」だった。山田「パーマンのコピーロボットが2つか、3つあったらいいなと思う。若い頃から嫌だったのは、だれかに光が当たりはじめると賞もなにもかもその人に集中するということ。それがおもしろくないと思っていた。僕は45歳になって、自分の役割は『けしかけること』だと思っている。僕だけがやっていてもダメ。コピーロボットはないんだから、他の人をけしかける」
●そのひとつが「RMF&山田和樹グローバルプロジェクト」。さまざまな取り組みが行われていて、ひとつは日本人若手音楽家の海外オーケストラへのゲスト参加。今回はCBSOのゲストメンバーとしてヴァイオリンの福田麻子が現地リハーサルから日本ツアーまで参加する。過去にはモンテカルロ・フィルの来日公演でヴァイオリンの福田廉之助らが参加し、福田はその後にオーディションを経てモンテカルロ・フィルに入団している。また、山田和樹指揮によるモンテカルロ・フィル定期公演のソリストが公募で選出され、フルートの石井希衣の出演が決定。そのほか、今回のCBSOとのツアー期間中に山田和樹による指揮セミナーが開催される。
●音楽監督を務めるCBSOとの関係について。山田「僕は世界一、幸せな指揮者だと感じている。バーミンガムでは年間最低14週を過ごす契約で、実際には18週を過ごしている。ふつう、オーケストラとの関係はどんなによくても時間が経てば飽きられてしまう。でもバーミンガムではそんなことはまったくない。オーケストラはとてもポジティブで、市が財政破綻して支援がなくなっても、そのポジティブさは変わらない。ドイツのツアーがキャンセルになって一週間空いたときは、バーミンガムの街で無料イベントをやった。ショッピングモールや駅でも演奏したし、僕はトラムに乗って電子ピアノを弾いた。CBSOは夢のようなオーケストラ」
●来日公演のプログラムではムソルグスキーの「展覧会の絵」がヘンリー・ウッド編曲版で演奏される。ヘンリー・ウッドといえばBBCプロムスの祖。これは同コンビでプロムスでも演奏されている。山田「僕はラヴェル編曲は一度も指揮したことがなく、ストコフスキ版とかジュリアン・ユー版とか伊藤康英版など、ちがう編曲でたくさん指揮している。ヘンリー・ウッド版はラヴェルよりも前の編曲で、ラヴェルはここからヒントを得たと思われるところもある」。
●ほかにもいろんな印象的な言葉がたくさん。「バーミンガムではスポンサーとの食事を求められる機会が多いが、一度も断ったことがない」「(師の小林研一郎について)人間的な大きさでまったくかなわない。かなわない師を持った幸せを感じている」「待っているだけでは限界がある。自分から出ていくことが指揮者の役割」。録音については「これは言っちゃってもいいのかな?」とためらいつつ、ドイツグラモフォンでCBSOとウォルトンの作品を録音しており、できれば日本の作曲家の曲も録音したいと思っていると語ってくれた。
January 17, 2025