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January 27, 2025

サントゥ=マティアス・ロウヴァリ指揮フィルハーモニア管弦楽団のシベリウス他

●24日はミューザ川崎でサントゥ=マティアス・ロウヴァリ指揮フィルハーモニア管弦楽団。ソリストふたりが登場する豪華公演。プログラムがショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番(三浦文彰)、休憩をはさんでチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(辻井伸行)、シベリウスの交響曲第5番。協奏曲が2曲もあって、しかもそのうち1つがショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番なのだから、すごいボリューム感。アンコールも含めると21時半を過ぎた。
●フィンランドの音楽一家出身のサントゥ=マティアス・ロウヴァリ(たしか両親ともラハティ交響楽団の楽員)、2012年に東京交響楽団に客演した公演を聴いているが、そのときはまだ学生さんみたいな雰囲気の若者で、愛嬌のある感じだった。今もまだ指揮者としては若いけど、すっかり貫禄が出て、余裕の指揮ぶり。2020年から首席指揮者を務めるだけあって、オーケストラを自在にコントロールするといった様子。2曲の協奏曲でもソリストに寄り添うだけに留まらない雄弁さ。
●3曲ともメインプログラム級の聴きごたえ。ショスタコーヴィチでは三浦文彰のソロが強烈。切れ味鋭く、しかも骨太なところもあり、濃密。この曲の終楽章の頭のところだっけ、初演者オイストラフがあまりにソロが弾きっぱなしなので少しだけ休む場所を入れてほしいとショスタコーヴィチにお願いした場所は(うろ覚え、違ってたらゴメン)。ともあれ、ソリストに求められる集中度は尋常ではない。辻井伸行のチャイコフスキーも堂々たる熱演で、スケールが大きい。第3楽章は高速テンポでスリリング、高揚感あふれるフィナーレに。この曲、有名な割に意外と満足できる演奏に出会えないのだが、久々の名演。作品の内側にぐっと踏み込む感があるというか。アンコールに得意のカプースチンで演奏会用エチュード第1曲「プレリュード」。一段と客席がわき上がった。
●この2曲の後に聴くシベリウスの交響曲第5番は、開放感があって格別の喜び。自分はこの曲を描写性豊かな自然賛歌の交響曲として聴いているのだが、風光明媚できれいだね、ではなく、畏怖の念が込められているところに魅力を感じる。自然が美しいのはそれが本質的に怖いものだから、といつも思うので。ロウヴァリのシベリウスはドラマティックな造形。オーケストラのサウンドは明瞭で鮮やか、見通しがよい。全員が緻密にひとつの方向を目指すというよりは、名手が集まって腕自慢大会をするみたいな積極性が感じられるのが吉。とくに木管セクション。以前はサロネンの指揮で聴く機会の多かったオーケストラだが、ロウヴァリ時代の今も健在。アンコールに曲名を言ってからシベリウスの「悲しきワルツ」。
●ふつうなら指揮者のソロカーテンコールになりそうな演奏だったが、さすがに21時半を過ぎると、みんな慌てて帰る。これはしょうがない。

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