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January 31, 2025

「光のそこで白くねむる」(待川匙)

●評判になっているのを目にして読んだ、「光のそこで白くねむる」(待川匙著/河出書房新社)。第61回文藝賞受賞作。これはびっくりするほどの傑作。一人称の小説で、東京で働いていた「わたし」が勤め先の土産物屋が閉店になったことを機に、久しぶりに故郷に帰り、墓参りに向かう。そんな枠組みで始まるのだが、ぜんぜん予想もしなかった方向に話が向かい、過去の記憶が掘り起こされるにつれて、「わたし」という人物の歪んだ認知がうっすら浮かんできて戦慄する。閉鎖的な田舎の怖さがある一方で、「わたし」の怖さもあり、でも、それでいて「わたし」に共感したくなってしまうような居心地の悪さが肝か。事実はあやふやだが、物事はひとつの真実で語れるものではないということにも思い至る。ここに描かれる田舎にフォークナーを連想しなくもない。あの「祖母」がいい。
●てっきり語り手の性別を女性だと思い込んで読んでいたが、読後にどちらとも明示されていないことに気づいた。なぜそう思い込んだのか。短い話なので、もう一度読んでみてもいいかもしれない。

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