●2日はミューザ川崎のモーツァルト・マチネ。日曜日の午前11時開演ということで、なじみの薄いシリーズなのだが、この日は佐藤俊介が登場するので朝から川崎へ。やはり同業者多数。プログラムはヴァンハルの交響曲ニ短調(Bryan d1)ミスリヴェチェクのヴァイオリン協奏曲ホ長調、モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」。昨秋に同じプログラムがオーケストラ・アンサンブル金沢で組まれたときはふつうの定期演奏会だったのだが、今回は休憩なしの短いプログラムに変身していた。休憩なしの公演としては少し長めなので、得した気分。
●弦楽器の編成はかなり小さく、5-5-4-3-2だったかな。もちろん対向配置。バロック・ティンパニ、直管のトランペットを使用、佐藤俊介はほぼヴァイオリンを弾きっぱなしでオーケストラをリード。それでもテンポも強弱も自在にコントロール。急激な加速あり減速ありタメあり、鋭いアクセント、柔らかい音色、本当に表現が多彩でスリリング。とりわけ「プラハ」は鮮烈で、もう普通のモーツァルトを聴けなくなりそう……。
●ヴァンハルもミスリヴェチェクもモーツァルトと交流があり、ともに生前は確固たる名声を築いていた作曲家。モーツァルト的な楽想が頻出するのだが、どちらがどちらに影響を与えたのか。ヴァンハルの交響曲ニ短調、第1楽章はモーツァルトの交響曲第25番を連想させる。第3楽章もモーツァルトの交響曲第40番の第3楽章に似ている。これはヴァンハルのほうが先だろう。ヴァンハルはウィーンに住んでいただけあって、ハイドン、ディッタースドルフ、モーツァルトといっしょに弦楽四重奏曲を演奏したこともある(ヴァンハルはチェロを弾いた)。モーツァルトがヴァンハルの作品を演奏したこともあったというので、距離感は近い。
●一方、ミスリヴェチェクは若き日のモーツァルトとボローニャで出会っており、モーツァルトの手紙にもミスリヴェチェクの名はなんどか出てくる。モーツァルトはミュンヘンでミスリヴェチェクのソナタを弾いたことがあり、とても軽快できれいに響く曲だと姉のナンネルに宛てて手紙で書いている。作風は近いし、実際、この日のヴァイオリン協奏曲ホ長調はとてもすばらしかった。ただ、並べて聴くと、モーツァルトの天才性が際立っていると感じることもまた事実なのだが。
●12時20分くらいに終演。暖かい日だったので、どこかに寄り道したくなるところだが、予定があったのでまっすぐ帰る。
March 3, 2025