amazon
March 6, 2025

パンゲア・トリオ・ベルリンのドヴォルザーク、ブラームス、ラヴェル

●5日は文京シビックホールの大ホールでパンゲア・トリオ・ベルリン。ベルリン・フィルの第2ヴァイオリン首席奏者のマレーネ・イトウ、同じくベルリン・フィルのチェロ奏者ウラジーミル・シンケヴィッチ、ピアノのヤニック・ラファリマナナの3人からなるトリオ。パンゲアとはすべての大陸、現在の大陸が分裂する以前にひとつになっていた超大陸の意。少し変わった名前だと思ったが、マレーネ・イトウが日本にルーツを持ち、オーストラリアで学んでいることや、ラファリマナナがパリで学んだ後にボストンに移り、今はベルリンを拠点としていることなど、それぞれの多様なルーツや拠点の変遷を考えれば、納得のネーミング。
●プログラムはラフマニノフのヴォカリーズ、ドヴォルザークのピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」、ブラームスのピアノ三重奏曲第3番、ラヴェルのピアノ三重奏曲。こちらもそれぞれ異なる文化圏の作品が並んでいて、汎世界的な選曲ということか。洗練され、練り上げられた演奏。起伏に富んだドラマを描いていたとは思うのだが、なにしろ会場が2000席クラスの大ホールだったので、巨大空間の残響のなかでディテールが埋もれた感は否めない。弦のふたりはふだんから同じベルリン・フィルで弾いているわけだが、ピアノが巧みに弦と溶け合い、3人がいっしょになってひとつの絵を描く。こうして並べると、やはりラヴェル作品の独創性は際立っている。白熱する終楽章は圧巻。
●大きなホールだがお客さんはよく入っていた。プログラムノートに「楽章間での拍手はお控えください」とわざわざ書いてあって不思議な気がしたが、演奏が始まったら楽章間で逐一拍手が起きた。珍しい光景だが、ふだんあまりクラシックを聴かない人も大勢来てくれたのだから喜ばしいこと。そして、楽章間で拍手をするかしないかは、聴衆が決めればよいことだと思う。
●文京シビックホール、たまにしか来ないけど、アクセスが抜群によい。地下鉄2駅から直結という恵まれた立地。