●6日はサントリーホールで沖澤のどか指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)。だんだん周知されてきたかもしれないけど、OEKの東京定期は18時30分開演。要注意だが、終演が早まるのはいろいろとありがたい。客席は盛況。開演前に広上淳一OEKアーティスティック・リーダーが登場して、能登の支援についての報告があった。
●かつてOEK指揮研究員を務め、事務局仕事も経験した沖澤のどかが、大きく育ってOEKの指揮台に帰還。プログラムはプロコフィエフの「古典交響曲」、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番ハ短調(牛田智大)、オネゲルの交響曲第4番「バーゼルの喜び」。「古典交響曲」はOEKの「持ち曲」というか、さまざまな指揮者たちのもとで演奏してきた定番のレパートリー。室内オーケストラならではの軽快機敏さが特徴だが、沖澤の「古典」は一段階スケールアップした大柄な音楽。アクセントがくっきりして、管と打楽器のバランスが強めで、とても精力的な音楽になっている。モーツァルトのソロを務める牛田智大を聴いたのは久々。3年ぶりかな。すっかり立派な大人のピアニストになっていて、明快なタッチによる堂々たるモーツァルト。第1楽章のカデンツァ、古典派様式をはみだしたロマン派ヴィルトゥオーゾ寄りのスタイルだったけど、だれのものなんでしょ。バロック・ティンパニ使用。ソリスト・アンコールは、吉松隆の「ピアノ・フォリオ……消えたプレイアードによせて」。だれの曲かわからずに聴いたけど、モーツァルトの余韻の後にふさわしい清冽さ。
●後半、オネゲルの交響曲第4番「バーゼルの喜び」は快演。コンパクトな編成による透明感のあるサウンド。いろんな相反する要素がひとつになった曲で、田園的でもあり都会的でもあり、楽しげでもあり悲観的でもあり、未来を向いているようでもあり懐古的でもあるという、戦後の空気のなかで生まれた二律背反の音楽。終楽章に登場するバーゼルのお祭りのメロディは今も使われていて、下のBasler Fasnacht 2024の映像を見ると、あそこで行進曲調になるのが腑に落ちる。アンコールに芥川也寸志「トリプティーク」より第2楽章。ソリストとオーケストラのアンコールがともに日本人作品でそろえられていた。
March 7, 2025