●東京都美術館で開催中のミロ展へ(3/1~7/6)。初期作品から晩年の作品までがそろった充実の大回顧展。作風の変遷が明快なので、年代別に眺めていくおもしろさがいっそう増す。初期のキュビズム、フォーヴィスムの影響が大きかった頃から、やがて具象が抽象になり、写実が記号になり、面が線になり、自然賛歌が都市の憂鬱になり、色彩の使用が限定的になり、だんだんミロがミロになってくる。最後のフロアのみ撮影可だったので、写真は後年の作品ばかりだが、上は「太陽の前の人物」(1968)。太陽はミロの主要なモチーフのひとつであるね……と言いつつ、頭に思い浮かんだのは、アスキーアートの
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だった。もう太陽が頭にしか見えないっ!
●こちらは「月明りで飛ぶ鳥」(1967)。月も主要なモチーフ。黄色というより橙の月。夜空は緑。
●ミロが生きた時代は戦争の時代。スペイン内戦から逃れ、第二次世界大戦から逃れ、逃げることに大きなエネルギーを費やしている。戦時の鬱々とした気分は作品からも伝わってくるが、対照的に戦後の開放感もはっきりと感じる。ミロは元気に長生きしたので、自分の名声が世界中に広まり、教科書に載るような存在になるのをしっかりと見届けることができたはず。孫のための作品が展示されているのを見るとほっとする。この孫のために描いた「エミリ・フェルナンデス・ミロのために」と、星座シリーズの3点が圧巻。
●鳥、星もよく出てくるモチーフ。武満みたい。
●ポスターもいくつか展示されていて、これは「バルサ FCバルセロナ75周年」(1974)。これがフットボール・クラブの歴史と伝統というものなのか。もう羨望しかない。
●立体作品もある。これは「逃避する少女」(1967)。着色ブロンズ。頭上に乗っているのは蛇口。造形もおもしろいが、この色彩感と来たら。赤と黄色が、とてもミロだと思うじゃないっすか。それで。
●「逃避する少女」のすぐ脇に、こんな消火器が置いてあるんすよ! これ、ミロでしょ!! この赤と黄色。黒の取っ手の曲線と直線のコントラスト。コンセントの造形。ぜったいミロだ! ミロの消火器だ! そんなことを思いながら、ミロ展で消火器の写真を撮っている自分。いやー、これ、わざとやってるでしょ。
●これはかなり大型の作品なんだけど、遠目に見ると墨絵っぽくて、東京国立近代美術館の日本画フロアにでも来たのかと錯覚するが、近くで見るとミロらしい赤や黄色、青も使われている。題は「花火 I」「花火 II」「花火 III」(1974)。ということは、白い背景が夜空で、墨のような黒が炎なのか。
●高解像度の写真はインスタで。