●18日は紀尾井ホールで辻彩奈のヴァイオリン・リサイタル。すぐれた若手ヴァイオリニストが次々と頭角を現しているが、ロマン派のレパートリーにおける濃密な表現に関しては際立った存在。今回のプログラムは、イザイの「悲劇的な詩」、フランクのヴァイオリン・ソナタ、ルクーのヴァイオリン・ソナタというベルギー出身の作曲家特集。フランクのヴァイオリン・ソナタ、ルクーのヴァイオリン・ソナタはともにイザイのために書かれた作品。そしてルクーの師はフランク。ルクーの曲は、夭折した作曲家の貴重な傑作ということで昔から熱心な愛好者がいたと思うのだが、自分はなかなか聴く機会がなく、こうしてライブで聴けたのは大きな収穫。豊かなパッションと確かな技巧に支えられたスケールの大きな音楽を堪能。輝かしくのびやかな音から芯のある太い音まで、しっかりと楽器を鳴らしきっている感がある。
●ルクー作品、師フランクのヴァイオリン・ソナタと共通する詩情と風貌があると思うが、フランクのソナタが64歳の年に書かれているのに対して、ルクーはわずか22歳。すごい成熟度。老成しているともいえるけど、全3楽章で30分を超える力作で、青年期のエネルギーにあふれた野心作でもある。第3楽章の高揚感がすばらしい。アンコールにイザイの「子供の夢」。すこぶるやさしい子守歌。
●ピアノはエマニュエル・シュトロッセ。と聞くと、なんだかラ・フォル・ジュルネ味があるデュオだなと思うわけだが、実際にナントのラ・フォル・ジュルネでの共演がきっかけとなって、実現したリサイタルなのだとか。
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●宣伝を。ONTOMO連載、五月女ケイ子の「ゆるクラ」第14回は前回に続いて「推し活」がテーマ。お助けマンとして参加中。今回も五月女さんの脱力イラストが味わい深い。
March 24, 2025