●26日はトッパンホールでエベーヌ弦楽四重奏団。トッパンホールはこの日から3夜連続のカルテット祭りで、26日がエベーヌ弦楽四重奏団、27日がベルチャ・クァルテット、28日がエベーヌ弦楽四重奏団とベルチャ・クァルテットの共演による八重奏となっている。最高峰のクァルテット2団体の登場とあって、3公演とも全席完売。
●で、エベーヌ弦楽四重奏団のプログラムはベートーヴェンの弦楽四重奏曲第1番、ブリテンの「3つのディヴェルティメント」、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番(大フーガ付き)。最初のベートーヴェンからキレッキレの四重奏に圧倒される。彩度とシャープネスの目盛りを最大に振ったような鮮烈さ。しかし強靭一辺倒ではなく、ニュアンスに富んだ柔軟さもあって、表現の振幅が大きい。メンバーはピエール・コロンベ、ガブリエル・ル・マガデュール(以上ヴァイオリン)、マリー・シレム(ヴィオラ)、岡本侑也(チェロ)。事前に知ってはいたけど、あのエベーヌに日本人奏者がいる様子は、マンチェスターユナイテッドの一員に香川真司を見たくらいのインパクトがある(←たとえが古い)。響きの質という点では、ほかの3人の獰猛なくらいのアグレッシブさとはひと味違って、チェロがエレガンスと歌の要素をもたらしていたと感じる。
●ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第1番、この曲がこんなに鋭く巨大な音楽として奏でられることを作曲者は予見できただろうか。第2楽章はヨルゴス・ランティモス監督の奇怪な映画「ロブスター」のテーマ曲とでもいうべき悲哀の音楽。ブリテンの「3つのディヴェルティメント」は初演の失敗でお蔵入りになった初期作品。ウィットに富んだ曲だと思うが、1936年時点のロンドンの聴衆にはスパイシーすぎたのかもしれない。メインプログラムのベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番は終楽章に大フーガを置いて演奏。すさまじい集中力で、壮絶。すごすぎて、軽く鬱になりそうなくらい(あまりに強烈な演奏を聴くとそういう感情がわくのは自分だけ?)。
●で、先週、21日にトッパンホールで2025/26シーズン主催公演についての発表を中心とする記者会見があった。笹野浩樹支配人の挨拶に続いて、西巻正史プログラミング・ディレクター(写真)がラインナップを紹介。フォーレ四重奏団を中心とする5夜にわたる室内楽フェスティバル、ハーゲン・クァルテットの最後の活動となりそうな全5公演の「ハーゲン プロジェクト フィナーレ」、キリル・ゲルシュタインと藤田真央のデュオ、ベルリン古楽アカデミー、アンナ・プロハスカ with ジョヴァンニ・アントニーニ指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコなどなど、開館25周年を迎えて充実のラインナップ。
●ちなみに4月1日から、ホール名の表記が「TOPPANホール」になるそう。TOPPANのグループブランド統一の観点から変更されるという。口頭ではなにも変わらないわけだが、表記は変わるということで媒体側では気を使うところ。