amazon
March 28, 2025

ベルチャ・クァルテットのシェーンベルク&ベートーヴェン

トッパンホール ベルチャ・クァルテット
●27日はトッパンホールへ。この日はベルチャ・クァルテットが登場。コリーナ・ベルチャ、カン・スヨン(以上ヴァイオリン)、クシシュトフ・ホジェルスキー(ヴィオラ)、アントワーヌ・レデルラン(チェロ)。プログラムは前半がシェーンベルクの弦楽四重奏曲第1番、後半がベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番。どちらも切れ目のない長大な楽曲。シェーンベルクは全体で45分程度で、規模としては「ペレアスとメリザンド」を聴くのと変わらない。後期ロマン派のスタイルと無調の中間地点みたいな作品。すさまじい熱量に圧倒される。「ペレアスとメリザンド」はストーリー性があるから場面場面をつなぎ合わせた音楽として聴けるけど、この曲で形式感や構造を手掛かりに楽しめるかというと微妙なところ。これも場面場面の音楽として聴いた気がする。
●後半、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番は前夜のエベーヌに続いて、キレッキレのエクストリーム・ベートーヴェン。切れ味の鋭さ、柔軟さ、精緻さ、パワー、表現の引き出しの多さ、推進力など、ほとんど人外魔境の域。作品の性格の違いもあるけど、前夜と比べると「遊び」を感じるのと、重い響きが効果的に用いられていたのが印象的。放心してこれで十分だとも思ったけど、アンコールがあって、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番の第3楽章、さらにベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番の第3楽章。ショスタコーヴィチは本編以上に切れ味鋭く爆発的だったのだが、これで終わるのはなんだかな……と思ったら、ベートーヴェンの第16番で平安をもたらしてくれた。
●些末なことなんだけど、オフィシャルな日本語表記が「エベーヌ弦楽四重奏団」と「ベルチャ・クァルテット」。並ぶとどっちかに統一したくなるけど、そうもいかないか。自分としては「カルテット」がいちばん自然な日本語だと思うんだけど、人気がない。Tokyo String Quartet の表記は「東京クヮルテット」だった。最近、さすがに小さい「ヮ」はあまり使われない。