●30日は石川県立音楽堂で「オーケストラ・アンサンブル金沢 オーケストラの日 2025」。3月31日がオーケストラの日なのは「ミミにいちばん」からの語呂合わせなのだが、その前日の開催。オーケストラの日が学校の春休み期間中に設定されているということもあり、公演内容としては地域密着型のファミリーコンサート。子どもたちによる地元音楽団体がいくつも出演し、OEKはそれを支える役回り。休憩なし90分ほどの公演で、客席は大盛況。
●まず、いしかわ子ども邦楽アンサンブルが筝曲「三段の調」、長唄「共奴」より、「ひゃくまんさん小唄」を演奏。オーケストラの日と言いつつ、邦楽で始まるのは土地柄だが、邦楽アンサンブルも広義のオーケストラのひとつか。初心者も含むそうだが、子どもたちが立派な演奏を披露。続いて、珠洲市にある石川県立飯田高校の有志による合唱「朝の光が照らすカーテン」。これは「イマを謳おうプロジェクト」として、作詞も作曲も高校生たちが自ら行ったもので、阿部海太郎が編曲。高校生たちの日常に向ける前向きなまなざしがとても率直に歌われていたのが印象的だった。眩しく、頼もしい。
●OEKのみによる演奏は一曲のみで、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」第1楽章。新鋭、石崎真弥奈が指揮。さらに児童合唱団のエンジェルコーラスが加わって小田美樹作曲の「群青」、続いて石川県ジュニアオーケストラとOEKの共演で、チャイコフスキーの交響曲第5番より第4楽章。シンバルまで入った大編成による合同演奏ならではの迫力で、ひたむきさがひしひしと伝わってくる。おしまいは参加者全員で定番の杉本竜一「ビリーブ」。この曲、今やすっかり卒業式、卒園式、学校行事の音楽として定着しており、年代を超えて思い出深い曲になりつつある。アンコールはヨハン・シュトラウス1世「ラデツキー行進曲」。石崎真弥奈は客席を向いて、ニューイヤー・コンサートばりに拍手を指揮。客席とのコミュニケーションがうまい。司会はフリーアナウンサーの徳前藍。
●「ラデツキー行進曲」で指揮者が客席に向かって拍手の開始や強弱を指示するようになったのは、ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートでロリン・マゼールが始めたことだと記憶しているのだが、このスタイルが今や世界の隅々まで行き渡っていることを実感する。
April 1, 2025