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April 9, 2025

「職業は専業画家」(福井安紀著)

●コロナ禍以降、美術展に足を運ぶ機会が増えたのだが、たまに若手アーティストの作品を見ながら、ふと思う。「こういう人たちって、絵で生計を立てていけるものなのかな?」。きっと、この道を志す人の99%以上の人は食べていけなくて、ほんのほんの一部の人だけが脚光を浴び、多忙を極めるのだろう。漠然とそう考えていた。
●そんな先入観を打ち破ったのが、「職業は専業画家」(福井安紀著/誠文堂新光社)という一冊。著者は30歳までサラリーマンを務め、その後、絵だけで生計を立てている画家。だが、有名な賞を獲ったわけでもなければ有力な画商がついているわけでもない。ではどうやって絵で身を立ててきたのか。
●その答えは本の最初のほうに書いてあって、全国各地で数多くの個展を開いてきたから。年に4回から8回のペースで個展を開き続け、2020年には13回もの個展を開いたという。もちろん個展を開いても絵が売れるとは限らないし、なぜそんなにたくさん個展を開けるのかという疑問がわくが、そこもかなり詳細かつ具体的に記されている。絵の値付けをどうするか、販促活動をどうするか、など。画家であってもわれわれと同じくフリーランスの自営業者であるわけで、「仕事」としてすべきことはしなければならないという理にかなった話ばかり。
●絵の注文も受けるけど、営業はしないという話にも納得。値付けに大きな幅のある業種では「あるある」だと思うけど、営業で得られる仕事は最低ランクの値段がつきがち。逆に依頼される仕事なら値付けが少々強気でも、むしろ依頼者の見識の確かさを証明することになるってことなんだと思う。