●9日は東京文化会館大ホールで東京・春・音楽祭「アンサンブル・アンテルコンタンポラン I ~ ブーレーズ 生誕100年に寄せて」。指揮はピエール・ブルーズ。ピエール・ブーレーズではなく、ピエール・ブルーズ。わかっちゃいるけど、ドキッとする校正者泣かせの名前。よりによってアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督がピエール・ブルーズとは! で、プログラムが生誕100年を迎えたピエール・ブーレーズに寄せて。もう絶対まちがえる。
●プログラムにはブーレーズ作品に加えて、スイスの現代の作曲家ミカエル・ジャレルの作品も加わっている。前半がジャレルの「アソナンス IVb」(ホルン独奏はジャンヌ・モーグルニエ)、レ・メタボールの合唱が加わってブーレーズ「カミングスは詩人である」、ジャレル「常に最後の言葉を持つのは天のようだ」(日本初演)、後半がブーレーズの「シュル・アンシーズ」。ジャレル「アソナンス IVb」はホルンのみの作品で、特殊奏法と超絶技巧の嵐といった様子で凄まじい曲。どこかで聴いたことがあるかなとも思ったけど、ないはず。いちばん楽しめたのはブーレーズの「シュル・アンシーズ」。録音で聴いてもピンと来なくて、どうしようかなと迷った末に日程を理由にこの日を選んだんだけど、結果的に正解だった。ピアノ、ハープ、パーカッション3人ずつの編成で、減衰する音の組合せによる打楽器アンサンブル的な響きのおもしろさはライブならではで、きらびやかでほとんど陶酔的。現代音楽には、キラキラと元気が必要(なんだそりゃ)。
●前回の来日が小ホールだったので、今回も小ホールだと思い込んでいたのだが、会場は大ホールだった。さすがに客席はガラガラで半分も埋まっていない(控えめな言い方)。小ホールだったら問題なく盛況だったわけで、このあたりは編成の大きさとの兼ね合いもあって難しいところか。
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●余談。ピエール・ブルーズっていう名前、今は検索エンジン泣かせ、あるいはAI泣かせというべきか。ChatGPTに「フランスの指揮者ピエール・ブルーズについて、100字程度で紹介してください」ってお願いしたら、案の定、「ピエール・ブーレーズ(Pierre Boulez)はフランスの指揮者・作曲家で、現代音楽の革新者として知られる。鋭い解釈と精緻な指揮で、20世紀音楽の普及に貢献した」って帰ってきた。
●で、同じ質問をPerplexityにしたら、やっぱり「ピエール・ブーレーズ(1925-2016)はフランスの作曲家・指揮者で、現代音楽の革新者として知られる。IRCAM設立や『ル・マルトー・サン・メートル』などの傑作で音楽界に多大な影響を与えた」って帰ってきたんだけど、Geminiは偉かった。「ピエール・ブルーズは1977年生まれのフランスの指揮者です。元々はヴァイオリニストで、トゥールーズ室内管弦楽団のコンサートマスターと副指揮者を務めました。現在、最もエキサイティングな指揮者の一人として注目されており、2023/24シーズンからアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督を務めています。東京春祭2025にも出演予定です」と来たもんだ。珍しくGeminiが勝利(自分比)。ただし、100字の指定を無視している。
●と、AIと戯れてはいるが、日進月歩だからこんなのは過渡期のぶれにすぎなくて、あっという間に革命的な変化を社会にもたらすのだろう。これは成長の記録。
April 10, 2025