●12日はNHKホールへ。N響に2シーズンぶりにパーヴォ・ヤルヴィが帰ってきた。前首席指揮者ながら、なかなか聴けなくなってしまったが、このコンビならではの切れ味鋭く引きしまったサウンドは格別。どんなレパートリーであっても、オーケストラを聴く喜びを堪能させてくれる。プログラムは、ベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」(アントワーヌ・タメスティ)とプロコフィエフの交響曲第4番(改訂版)という少し不思議な組合せ。
●前半の主役はヴィオラ独奏のタメスティ。協奏曲のように始まりながらもソリストの出番がだんだんなくなってしまうという「イタリアのハロルド」の特徴を逆手に取るような演劇的なアプローチで、作品の新たな魅力に気づかせてくれた。なにしろ、ソリストが登場しないまま、曲が始まってしまう。第1楽章の途中で舞台袖からそっと現れる。で、ハープの隣で一緒に弾いたりしながら、ハロルドになりきってステージ上をさまよい歩く。けっこう舞台の奥にも行くのだが、タメスティの音はどこからでも同じように客席にしっかり飛んでくる。終楽章の頭の一撃に、タメスティはビクッとして上手の袖から退出する。そして、おしまいのほうで下手袖から再登場して弾く。トゥッティの部分でも第一ヴァイオリンの後方でいっしょに弾く。これなら終楽章で手持ちぶさたでずっと立っているなんてことにはならない。ソロがめっぽう上手いうえに、オーケストラ全体を鼓舞する効果があって、完全にタメスティ劇場。この曲で演出を工夫した例は過去にも記憶があるが、ここまでの成功例を知らない。曲が終わると盛大なブラボー。ソリスト・アンコールにバッハの無伴奏チェロ組曲第1番の前奏曲をヴィオラで。快速テンポで颯爽と。
●楽しさ抜群の前半に比べると、後半のプロコフィエフの交響曲第4番(改訂版)が渋く感じられるのはしかたがないか。この曲、第1楽章にはマシーンの音楽というか工業音楽的な魅力を感じるのだが、先に進むにつれてとらえどころがなくなってくる。とはいえ、終楽章のおしまいは怒涛の勢いでスリリング。ピアノを指揮者の正面に向き合うように配置していたのもおもしろい。
●前後半ともタンバリンが活躍するプログラムは珍しい。
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●フォントの話。数日前のアップデートで、Windowsのブラウザの標準フォントが、メイリオからNotoに変わった。Noto、いいフォントなんだろうけど、字面が小さいので、その分、読みづらくなった感じがする。慣れるとまた違うのか、どうか。当欄はフォントを指定しているのでWindowsではメイリオのままだと思うが、AndroidではもともとNotoのはず。どうしたものかな。
April 15, 2025