●16日はサントリーホールでオクサーナ・リーニフ指揮読響。プログラムはブラームスのピアノ協奏曲第1番(ルーカス・ゲニューシャス)とベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。ゲストコンサートマスターに小川響子。大躍進中のウクライナの指揮者リーニフは小柄で華奢だが、指揮ぶりはきわめてダイナミック。はっきりした動作で、鋭角的な棒の振りはショルティを連想させる。前半、ブラームスのピアノ協奏曲第1番は、ライブではいつも難物だと感じる曲。ゲニューシャスはなんどかラ・フォル・ジュルネで聴いた人だが久々。テクニシャンでパワーもある人だと思うが、力むことなくスマート。オーケストラは重厚ではなく、抑制的。ソリスト・アンコールにシューベルトのメヌエット嬰ハ短調D600。かなり遅いテンポ設定で、左手のスタッカートを強調して弾くので、異様な雰囲気があっておもしろかった。舞曲ではなく、漂泊するかのよう。
●後半の「運命」は苛烈なベートーヴェン。乾いた鋭い響きで直線的にぐいぐいと進む。猛進する第1楽章だが、オーボエのカデンツァだけは思い切りゆっくり朗々と歌う。第1楽章のおしまいの部分は、いったん音量をがくんと落としてからクレッシェンドして閉じる「飛び出す運命」仕様。仕掛けは多い。終楽章はリピートありで、冒頭に戻る部分はすこぶるパワフル。畳みかけるように一気呵成に駆け抜ける。息を止めて全力疾走したみたいな「運命」だった。曲が終わると盛大な喝采があった一方、意外と拍手はあっさりと収まった感も。
April 17, 2025