●17日はサントリーホールで、ふたたびパーヴォ・ヤルヴィ指揮N響。プログラムは前半にストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)、後半にブリテンのピアノ協奏曲(ベンジャミン・グローヴナー)、プロコフィエフの交響組曲「3つのオレンジへの恋」。前半から「ペトルーシュカ」を聴けるというサービス満点プログラム。後半にピアノ協奏曲があって、舞台転換後に別の曲を演奏するという流れは珍しい。曲順を丸ごとひっくり返しても成立しそうなプログラムだけど、それだと前半が長すぎるのと、「ペトルーシュカ」で静かに終わるのが難点か。
●「ペトルーシュカ」はカラフル。グロテスクなストーリーを伝える語り口の巧みさがありつつ、オーケストラの機能美も追求され、すこぶる痛快。ピアノに松田華音。先日のプロコフィエフと同様、ピアノを指揮者と向き合う形で配置。この形だと協奏曲的性格は控えめで、オーケストラと一体になる。
●ブリテンはこの日最大のお楽しみ。ライブで聴くのは2回目、かな。なかなか聴けない。1938年、25歳の年に書かれたピアノ協奏曲は、まだ真のブリテン誕生以前というか、珍しく乾いたモダニズムがあって、むしろ気軽に聴ける面がある。ストラヴィンスキー、プロコフィエフ、ラヴェル(第2楽章)、バルトーク(第3楽章)を少し連想。おもしろいのは楽章構成で、協奏曲ながら4楽章で書かれていて、2楽章のワルツを舞曲楽章、3楽章の即興曲を緩徐楽章とみなせば交響曲風の構成なのだが、一方で第1楽章のトッカータにプレリュード的な性格があるので、プレリュード、ワルツ、即興曲、マーチという20世紀版古典組曲にも見える。グローヴナーのソロは達者。すっかり作品を手の内に収めているようで、きらびやかで軽快。ソリストアンコールはなく、おしまいは「3つのオレンジへの恋」。切れ味鋭く、豪快。ブリテンのピアノ協奏曲に続いて、この曲にもマーチが出てくるのだった。
April 18, 2025