Books: 2004年2月アーカイブ

February 23, 2004

「文壇」

野坂昭如/文壇●一昨年の刊行だが、薦められて野坂昭如の「文壇」を読んだ(文芸春秋)。舞台は60年代の日本文壇。著者がテレビ業界から活字の世界へ活動の場を転じ、色物雑文家から小説家になるまでを描き、当時の文壇(というか文壇バー)の様子が綴られる。三島事件直後の70年大みそか、丸谷才一が「たった一人の反乱」を書くまでの10年間を追っている。
●で、以下、書評でもなんでもなくて延々と余談なんだけど(しかもスゲー長い)、昔テレビのバラエティかなにかに出てきた野坂昭如が「オレはもう十年以上風呂に入っていない」って発言して、その場にいたアイドルの女のコたちがマジでひいてしまったときの言い訳がスゴかった。「風呂には入らないが、一日に下着を何度も替えている。だから、これは風呂に入っているのと同じだろう」。ス、スゴすぎる。キモヲタ的には参考になるなあ、デヘヘヘ。って違うだろ。
●「文壇」にも登場する銀座の有名な文壇バー、以前このうちの一つにワタシは行ったことがある(90年代なのでもう往時の文壇バーとは様子がずいぶん違ってるだろうけど)。とある大先生が若造に世間を見せてやろうと銀座に連れて行ってくださったのだ。が、銀座のバーどころか、そもそも酒を飲まないワタシなので、あらゆる場面で自分にふさわしい身の処し方がわからない。まず銀座に行くのにいきなり営団地下鉄に乗ると思ってるワタシ(笑)。違う違う、タクシーで行くんだってば。で、そこから何軒かハシゴするんだが、たとえばカウンターの向こう側に「ママ」がいる。ママってなんだよ、それ。誰のお母様でありますか(とは尋ねない)。だれもメニューを見てないのに、食い物やら水割りが出てくる。店を出るのに「お勘定」なんてない。後日、大先生の家に請求書が送られてくるわけだ。

February 6, 2004

「マッチスティック・メン」

マッチスティック・メン「マッチスティック・メン」(エリック・ガルシア/ソニーマガジンズ)を読んだ。リドリー・スコット監督、ニコラス・ケイジ主演で映画化されているようだが、そちらは未見。「さらば、愛しき鉤爪」のエリック・ガルシアの長篇、というかやや長めの中篇くらいか。
●ロイとフランキーという凄腕の詐欺師コンビが主役のコンゲームで、ここにロイの娘だという14歳の少女が割って入る。大人が少女に翻弄されたり、古典的な詐欺のテクニックを娘に教え込んだりと(まるで映画「レオン」みたい)大変楽しく、コジャレてて、気が利いている。ラスト・シーンがまた良い(映画と同じなのかどうかは知らない)。オススメ。
●ただし一つだけ難点が。詐欺師コンビが、かたや潔癖症で鬱で神経症(ロイ)、かたや豪放磊落な浪費家(フランキー)という対照的な二人組みなのだが、ロイのほうが巨漢という設定である。これをついつい逆に思い込んでしまう(表紙には映画のロイ役ニコラス・ケイジが写ってて、これがまた混乱の元。痩せてるじゃん)。しかも、序盤は二人のどちらにも地の文の視点が定まっておらず、どっちが主人公なのだろうと思っていたら、途中から完全にロイに視点が定まる。ああ、わかりにくい。これはフツー、どうにかするだろ?→原著の編集者。

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