●最新刊ゲット。「のだめカンタービレ」第21巻。今回は帯に「夢色☆クラシック」でおなじみの佐久間学先生が登場。物語本編でも「クラシックライフ」の編集者とともにRuiの復帰コンサートを取材するためにパリ出張。なんてリッチな雑誌なんだ、「クラシックライフ」(笑)。あと佐久間学先生の使ってるICレコーダーがワタシのと同じっぽくて、少し嬉しい。オレもがんばってポエム読むぞ!と決意(ウソ)。
●話の本筋のほうはあれとかこれとかあって大いに盛り上がっております。Ruiにもっとも「のだめ」的なラヴェルのピアノ協奏曲で千秋と共演させるとか、演出的にも見どころ多し。
●スパム対策に今まで「の◎だめ」とか書いてたけど、今回からフツーに「のだめ」って書く。いろいろ対策を講じたので。
●で、クラヲタ的にはやっぱり千秋のこの選曲でしょ。黛敏郎の「舞楽」。パリのお客さんには大ウケ。いや、選曲でそこまでがんばらなくてもいいって気もするんだけど。amazonの「あわせて買いたい」コーナーに、黛と「のだめ」が並ぶかどうか、しばらく注視。
Books: 2008年8月アーカイブ
「のだめカンタービレ」#21 ネタバレなし
オペラハウスを爆破せよ
●「オペラハウスを爆破せよ」とは若き日のブーレーズの有名な言葉だが、もちろん比喩的な発言であって、本当に爆破しようという話ではない。何年か前に、この昔の発言がもとで、勘違いをしたスイス当局にブーレーズが一時拘留されたというニュースがあった。あまりにもおかしなニュースだったので、もとのウェブページをどこかに保存しておいた記憶があるのだが、あれはどこにいっただろうか……。しかし笑えるようで笑えない話でもある。そんな古い発言が、しかも明らかに芸術上の比喩とわかるものが、国家権力には伝わらないなんて。
●オペラハウスの爆破について言及したのはブーレーズだけではない。もっと直接的な、テロとしてのオペラハウスの爆破計画が描かれているのが、ジョン・アーヴィングの名作「ホテル・ニューハンプシャー」だ。祖父、父母、五人兄弟姉妹の三代に渡る、大人のための少々過激なお伽噺であり、美しく悲しい愛の物語でもある。一家は廃校になった女子学院を改装してホテル・ニューハンプシャーを開業する。そこで「フロイト」と仇名されるウィーン出身のユダヤ人と出会い、後に一家ごとウィーンへと移住し、第二次ホテル・ニューハンプシャーを開く。このホテルに出入りする過激派たちが、オペラハウス爆破を計画する。オペラハウス、つまりウィーン国立歌劇場のことだ。
●テロリストはウィーン市民が崇拝するオペラ座を爆破することで、世界の耳目を引くことができると主張する。五人兄弟の一人がテロリストを翻意させようと、こう言って食い下がる。「今夜のオペラは満員の客を集められるオペラじゃないんだ。ウィーン市民が群れをなすモーツァルトとかシュトラウスじゃない。ワーグナーですらない。『ルチア』なんだ。ドニゼッティのオペラに値打ちがないことなんてワグネリアンじゃなくてもわかるだろう。もっと別のオペラの夜にしろよ。『ルチア』なんか吹っ飛ばしたら、ウィーン市民は拍手喝采して喜ぶぞ」
●笑。ジョン・アーヴィングはニューハンプシャー生まれのアメリカ人だが、ウィーン大学に単身で留学している。小説の中では家族で移住することになって、渡欧する前にみんなでドイツ語やウィーンの文化について予習したりする。兄妹でこんな感じでクイズを出し合ったり。
「こんどはお前の問題だぞ。天才的作曲家で、おそらく世界で最もすぐれたオルガン奏者だ。ところが彼は田舎者で、帝国の都ではまったくの世間知らずだった--そして若い娘とみると首ったけになるばかげた習癖があった」
さあ誰でしょう。って、クラヲタならブルックナーって即答できる問題っすね。
●最近バイロイトのワーグナーを聴いてたから思い出したんだけど、五人の兄弟姉妹のなかの二人には、「ジークリンデとジークムント」的な問題があったりするんすよ……。ジークリンデとジークムントはジークフリートを生んだけど、さすがにここではそうはならなくて、呆気に取られるような通過儀礼を経て問題を乗り越える。20世紀の神話と呼ぶべきか。