●ようやくNexus 7を用いて電子書籍を一冊読んでみた。Kindleアプリをインストールして、amazonのKindleストアをうろうろ。品ぞろえはリアル書店に比べるとはなはだ頼りないのであるが、購入した本の読みやすさに関してはほぼ問題はない。唯一、問題を感じるとすれば、夜、寝床で本を読もうとするときに画面が明るすぎるということだろうか。いちばん暗い設定にしても、まだまぶしい。発光している以上、しょうがないのかもしれないんだけど。
●Kindleストアで少し楽しいなと思うのは、PCでアクセスして、PCから携帯端末にダウンロードできるところ。PCで無料サンプルの送信なり、本の購入なりをすると、勝手に携帯端末のほうにダウンロードされていて、妙にうれしい。
●とりあえず読んでみたのは、名著「闘うプログラマー」(G・パスカル・ザカリー著/日経BP社)。2009年新装版のKindle版。90年代、マイクロソフトが新しいOS、Windows NTを開発し、リリースするまでのドキュメンタリーで、今読んでも「モノ作りの喜び(と、苦しさ)」がひしひしと伝わってきて、ものすごくおもしろい。主人公に相当するのはDECを干されていた伝説的プログラマー、デビット・カトラー。彼をマイクロソフトに引き抜くところから物語は始まる。あくが強く、生まれながらのリーダーのカトラーとその仲間たちが、DECとはまったく異なるカルチャーを持つマイクロソフトで様々な軋轢を生みながらも、「すぐれたOSを新たに作る」という目標に向かって猛進してゆく様子が描かれている。登場人物たちの個性の豊かさと、ひとつの画期的な製品を世に生み出すとき特有の熱気がひしひし伝わってきて、ページをめくる手が止まらなくなる(いや、めくるんじゃなくて、タッチするだけだけど)。当初の予定よりもプロジェクトが長引いて、途中で燃え尽きちゃう人や挫折する人が出てくるところも共感を呼ぶ。そして、この本を読むと、なにかコードを書きたくなる(笑)。書けないけど。
●こういう猛烈に働く話っていいなあと思うんだけど、一方でデスマーチはまっぴらなんすよね。本の企画なんかでも、不可能な進行に挑戦するみたいなデスマーチ系企画というのがたまにあって、そういうのとは少しちがう。ていうか、ぜんぜんちがう。
Books: 2014年4月アーカイブ
April 15, 2014
Kindleストアをうろつく/「闘うプログラマー」新装版
April 11, 2014
「バロック・オペラ その時代と作品」(山田治生編・著/新国立劇場運営財団情報センター)
●新国立劇場運営財団情報センターより「バロック・オペラ その時代と作品」(山田治生編・著、井内美香、片桐卓也、矢澤孝樹著)が刊行された。以前に「戦後のオペラ 1945~2013」をご紹介したが、その続編ともいうべき一冊で、代表的なバロック・オペラ41作品について、その概説とあらすじがコンパクトにまとめられている。非常にありがたい。モンテヴェルディ、ヴィヴァルディ、リュリ、ラモー、ヘンデルなど。音だけは聴いたことがあるけど実演には接したことがないというオペラがたくさん並んでいる。
●「戦後のオペラ 1945~2013」でも思ったんだけど、作品選択にあたって、歴史的な重要性を鑑みるというよりは、ワタシらがなんらかの形で接する機会のありそうという点が重視されている(ような気がする)のが実践的。たとえば、METライブビューイングで上映された「エンチャンテッド・アイランド(魔法の島)」なんかが入っている。これは過去の作品からのパスティーシュで、だれの作品というよりはMETが作った舞台といった性格のもの。新国立劇場というオペラ上演の現場そのものが発刊する書籍なんだから、こういった普通の事典類ならまず落としそうな作品を入れているのも納得できる。価格が安いのも吉。文庫本並、いや今じゃ文庫一冊も買えないくらいか。