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Books: 2019年12月アーカイブ

December 25, 2019

シャーロック・ホームズと「ボエーム」

●メリクリ。サンタさん、おつかれさまでした。
●クリスマスといえばオペラ「ボエーム」。先日、その原作であるアンリ・ミュルジェール著の「ラ・ボエーム」が光文社古典新訳文庫から刊行された。原作の本来の書名は「ボヘミアン生活の情景」だが、有名なオペラのほうに揃えたということなんだろう。この原作、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズにも登場していたことに気づいた。
読んでいるのはホームズではなく、ワトソンのほう。「緋色の研究」のなかで、夜、尾行に出かけたホームズを、ワトソンがワトソンが待っているという場面。

ホームズが出かけたのが9時近く。どのくらいで帰ってくるか見当もつかなかったが、わたしはぼんやりとパイプをふかしたりアンリ・ミュルジェの『ボヘミアンの生活の情景』を拾い読みしたりしていた。

●なるほど、あの分厚さであれば、いつ帰ってくるかもわからないホームズを待ちながら「拾い読む」のにふさわしいかもしれない。ちなみに「緋色の研究」にはホームズがヴァイオリンについて蘊蓄を傾ける場面などもあって、なにかと楽しい。一夫多妻制時代のモルモン教についての描き方も興味深いところ。
●ジョージ・クラムの「1979年のクリスマスのための小組曲」をSpotifyで貼り付けるテスト。


December 23, 2019

「メインテーマは殺人」(アンソニー・ホロヴィッツ著/創元推理文庫)

●これまでに読んだ「カササギ殺人事件」「シャーロック・ホームズ 絹の家」「モリアーティ」がことごとく傑作だったアンソニー・ホロヴィッツ。新作の「メインテーマは殺人」(創元推理文庫)もおもしろくないはずがない。と思って読み進めているうちに、これが「このミス2020」海外編の1位になったと知る。納得。すばらしく冴えている。
●今回の「メインテーマは殺人」の主人公は著者自身。作家本人が主人公として登場するのだが、彼のもとに元刑事の切れ者が訪れる。この元刑事が異様に鋭い観察眼の持ち主で、著者を一目見ただけで「しばらく田舎で過ごしていただろう」とか「新しい子犬を迎えた」とかズバズバと推理を的中させる。つまりこの元刑事がホームズ役、著者がワトソン役なんである。著者は本を書くために殺人事件の捜査をワトソン役として取材する……で、書かれたのがまさしくこの本というメタな趣向。本筋の謎解き部分はとてもフェアで、よく練られている。でもなによりすばらしいのは、読んでいて気持ちよくて、どんどんページをめくりたくなるところ。ミステリとは無関係のところでおもしろいところがいくつもあって、たとえばこういう一節。

原則として、わたしはウィキペディアは避けることにしている。探したいものがはっきりとわかっている場合には、あれはごく便利なサイトではあるが、あまりにまちがいが多すぎる。そのため、作家がウィキペディアを使って、いかにもきっちりと調べましたという顔をしようとすると、往々にして大失敗をやらかすことになってしまうのだ。

わかりすぎるくらいわかる真実。あるいはこれも。

もの書きを本業としている人間にとって、仕事を断ることほどつらいものはない。もう二度と開かないかもしれない扉を、自らぴしゃりと閉めてしまうようなものだからだ。

●読み終わった後で、最初に戻ってざっと眺めていると、「あ、ここにこんなことが書いてあるのじゃないの!」みたいな発見があって楽しい。

December 11, 2019

「ラ・ボエーム」原作が光文社古典新訳文庫から刊行

●これまで邦訳がなかったと思うのだが(たぶん)、アンリ・ミュルジェール著の「ラ・ボエーム」が光文社古典新訳文庫から刊行された。「ラ・ボエーム」といえば、もちろん、プッチーニのオペラを思い出すわけだが、オペラの対訳はあっても、その出発点である原作を読めないもどかしさがあったわけで、これは朗報。
●いやー、なんでオペラのほうはあんな人気作なのに、原作がなかったんすかねー、さっそくポチッとな、と思って価格を見てギクリ。文庫本で1760円ということはページ数は……おお、672ページ! なんだそれは。このページ数に大いにひるんで、まずはいったん書店で手にしてみるかと思いなおす。そんなに厚いんだったらkindle版がほしいけど、しばらく待っていたら出るんだろうか。うーん、どっちなんだ、これは。
●Jリーグが感動的な幕切れ(←マリノス・ファン限定)を迎えたと思ったら、中二日で代表戦。EAFF E-1サッカー選手権が韓国で開催されて、まずは中国対ニッポン戦で始まった。しかしそんなにすぐに代表戦があるとは思わず、テレビの録画予約を忘れてしまう。DAZNに慣れた今、わざわざ録画を予約しなければいけない試合があることに不条理を感じる始末。慣れって怖い。国内組による実質B代表みたいなチームなので、気持ちが盛り上がっていないせいもあるかも。

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